その他
デル日本法人、12月1日から社名変更 パソコンメーカーからの脱皮目指す
2003/12/15 21:12
週刊BCN 2003年12月15日vol.1019掲載
デルコンピュータ(浜田宏社長)が、12月1日付で社名を「デル」に変更した。米本社は7月18日付で同様の社名変更を実施しており、それに足並みを揃えた格好だ。一方、12月からは液晶テレビ、家庭用プロジェクタといったコンシューマエレクトロニクス製品群を国内投入、新たな分野へのアプローチを開始した。この2つに共通しているのは、いわばコンピュータメーカーからの脱皮だ。同社は昨年来、パソコン本体からサーバー、ストレージ、サービスへと事業の枠を拡大しているが、さらにコンシューマ分野へも進出。「必要があれば他社ブランド製品も積極的に扱っていきたい」(浜田社長)と、今後の拡大策に意欲を見せる。(大河原克行(ジャーナリスト)●取材/文)
コンシューマエレクトロニクス製品群を投入
■個人領域に事業を拡大、液晶テレビやプロジェクタを投入
デルの社名変更は、「コンピュータ」という文字を取っただけの極めてシンプルな変更だ。だが、これには、同社の今後を示す強い意志が見え隠れしている。一言でいえば、その名の通り、コンピュータ本体メーカーからの脱皮だ。
デルでは、「3つのS」という言葉を使い、一昨年からサーバー、ストレージ、サービス分野に積極的に乗り出し、この分野で成果を上げつつある。米本社では、すでに収益の20%以上を3つのSの製品群に代表されるエンタープライズ事業が占めており、日本法人でも売上比率は2ケタの規模にまで到達した模様だ。
特にサービス事業であるDTC(デル・テクノロジー・コンサルティング)は、国内累計で1000件近い案件数に達し、なかには数億円規模の情報システムに関するコンサルティング案件も出ているという。
こうした動きに加えて、この12月から新たに始まったのがコンシューマエレクトロニクス製品群の投入だ。
昨年来、コンシューマ分野へのパソコン販売を加速。国内でも積極的なテレビコマーシャルを展開し、一般コンシューマユーザーにもアピールを行ってきた同社だが、この戦略をパソコン以外にも拡大する構図だ。12月1日には17インチ液晶テレビを、12月4日には家庭市場を意識したプロジェクタを投入。来年には、さらに製品群を拡大する姿勢を見せる。
こうしたパソコン本体以外の事業拡大策を見れば、デルの社名変更は当然のことだといえよう。
だが、米国とは異なり、日本では「デル」という名称だけでは、すべての人にコンピュータメーカーと認知されるところまでは至っていない。デルコンピュータという名称だからこそ、コンピュータメーカーだと認知する人も多い。デルへの名称変更は、裏を返せば、デルというだけでコンピュータメーカーとして認知されるかどうかへの挑戦ともいえる。
むやみに事業を急拡大させているかのようにみえるデルだが、それは誤った見方だ。浜田社長は、かねてから自らの事業のやり方を「石橋を叩いても渡らない」と評する。
「コア事業の地盤ができ上がっていないのに新たな領域に出ると、足元をすくわれる。エンタープライズへの進出、コンシューマ分野への取り組みも、当社がコアとしている企業向けクライアントパソコン分野で認知度、サポート体制、実績という点で揺るぎないものができた段階で、ようやく本格進出を決定した」と話す。まさに、石橋を叩いても渡らない手法だ。
だが、やると決めた段階での加速度は抜群だ。この加速度ぶりが、むやみに事業を拡大させていると他社の目には映るのだろう。
エンタープライズ分野、コンシューマ分野への参入は、国内におけるクライアントパソコンビジネスの地盤が固まったうえで新たに進出したものであり、「建物に例えれば、企業向けパソコン事業を1階の基礎部分とし、2階部分にエンタープライズ事業とコンシューマ事業を建て増した」(浜田社長)という構図なのだ。
■パソコンに接続することが条件、家電メーカーと対峙しない
デルのコンシューマエレクトロニクス分野への進出は、日本のメディアでは「家電分野への参入」として取り上げられた。確かに、コンシューマエレクトロニクスという言葉は英米では家電を意味する。だが、デルの日本法人では「正確にいえば、家電とは異なる」と表現する。
「当社が投入する製品は家電ではなく、パソコンにつながるデジタル家電機器。そうした意味で、国内の家電メーカーが投入する一般的なデジタル家電とも一線を画す」(デル)という。デルのコンシューマエレクトロニクス製品の特徴は、パソコンに接続することが1つの条件となっている。17インチの液晶モニタや家庭向けプロジェクタも、パソコンとの接続を前提としているのが特徴だ。
「液晶モニタは、テレビチューナーを搭載していることからテレビとして利用でき、同時にパソコンのモニタとしても利用できるという分野を狙った。そのため、ユーザーターゲットも、パソコンを使っているユーザーになる」(同)
デルは、コンシューマエレクトロニクス製品の投入によって、国内の家電メーカーと対峙するわけではない。あくまでも主要顧客は、デルの直販サイトで購入したことがある、あるいはすでに他社製のパソコンを持っているパソコンユーザーなのだ。
だが、日本での展開は極めて慎重だ。
米国では、7種類にわたるコンシューマエレクトロニクス製品を投入しているが、日本の場合には2機種に限定している。米国では高い人気を誇るデルブランドのプリンタ(レックスマークからOEM調達)も、日本ではプリンタメーカー間の競合が激しく、デルブランドによる参入メリットが少ないとして、これを見送っている。
「パソコンにつながるコンシューマエレクトロニクス製品は、コモディティ化した部分からデルブランドで投入していく。同時に各市場の特性を見たうえで、市場に合わせた製品投入も進めていく」と、浜田社長は米国の手法をそのまま日本にもってくる考えはないとしている。
むしろ、個人向けパソコン本体の事業拡大策のために、コンシューマエレクトロニクス製品群の品揃えに取り組んでいるともいえ、それはエンタープライズ事業で見せたエンジン(=サーバー)とターボチャージャー(=サービス)に近い関係だといえるだろう。
コンシューマエレクトロニクス分野への展開は、過熱する報道や周囲の声とは裏腹に、地に足の着いた地道な事業戦略といえそうだ。
デルコンピュータ(浜田宏社長)が、12月1日付で社名を「デル」に変更した。米本社は7月18日付で同様の社名変更を実施しており、それに足並みを揃えた格好だ。一方、12月からは液晶テレビ、家庭用プロジェクタといったコンシューマエレクトロニクス製品群を国内投入、新たな分野へのアプローチを開始した。この2つに共通しているのは、いわばコンピュータメーカーからの脱皮だ。同社は昨年来、パソコン本体からサーバー、ストレージ、サービスへと事業の枠を拡大しているが、さらにコンシューマ分野へも進出。「必要があれば他社ブランド製品も積極的に扱っていきたい」(浜田社長)と、今後の拡大策に意欲を見せる。(大河原克行(ジャーナリスト)●取材/文)
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