その他
電子申告・納税システムがスタート 電子データ用言語「XBRL」の普及早まる
2004/01/05 15:00
週刊BCN 2004年01月05日vol.1021掲載
国税庁は「電子申告・納税システム」を今年2月から一部で開始するが、これらに向け業務ソフトウェア各社が電子データ用に標準化された言語「XBRL」への対応を急いでいる。国税庁への財務諸表などの提出で、XBRL形式が採用されたためだ。XBRLは、各種財務報告用の情報を、電子ベースで作成・流通・利用する上で標準化されたXMLベースの言語。業務ソフト11社は、それぞれ申告系ソフトのXBRL対応版を今年初めに出荷開始する予定だ。今後は、XBRLを用いた取引先企業の信用分析など、付加価値を付けたソフト開発競争が展開されそうで、各社の対応が注目される。(谷畑良胤●取材/文)
業務ソフトメーカー、対応版を年初から発売
■まずは2月から名古屋でスタート、6月には全国で「e-Tax」開始
インターネットで確定申告や納税ができる国税庁の「電子申告・納税システム(e-Tax)」が2004年2月、全国に先駆け名古屋国税局管内(岐阜、静岡、愛知、三重の4県)でスタートする。セキュリティなど安全性を確認した上で段階的に運用を拡大して、6月には全国で「e-Tax」が開始される予定だ。これにより、税目のうち法人税は、財務諸表の貸借対照表と損益計算書でXBRL形式が使用され、納税者だけでなく税務代理の権限を持つ税理士なども、この仕組みを利用できる。
東京証券取引所については、企業情報開示システム「TD-net」でXBRLの採用を開始。03年3月期の決算短信について、従来のCSV(コンマ区切りのファイル)形式に加え、XBRL形式による提出の受け入れを始めた。
業務ソフトウェア会社などの情報を総合すると、これまでに業務ソフト会社11社が法人税申告対応ソフトを準備中という。業務ソフト会社以外でも、NTTデータが主要会計パッケージの決算書データをXBRL形式に変換するソフトの出荷を予定しているほか、マイクロソフトも米国でリリース済みの、エクセルデータをXBRL形式に変換するオフィスソフト「ウィンドウズ・オフィス2003・アクセラレータ・フォー・XBRL」の日本語版を近く出す見通しだ。
米国XBRLの日本組織として、日本公認会計士協会を中心に01年4月に設立された「XBRLJapan(ジャパン)」では、昨年10月、会計業界で分散する10万以上に及ぶ勘定科目を約300科目に絞り込んだ「税務用財務諸表タクソノミー(辞書・定義体)」を発表した。このタクソノミーは国税庁が採用したため、今後、勘定科目の業界標準(フォーマット)になる見通しで、各業務ソフト会社では、この標準に基づいた電子申告・納税対応の改訂版会計ソフトなどを発売する動きを活発化させている。
XBRLジャパンのメンバーとして、このタクソノミーの作成に携わったピーシーエー(PCA)の水谷学・常務取締役管理本部長は、「日本でも諸条件が整い、XBRLは実用化の段階に入った。国内の4大メガバンクも、融資などの際に参照する資金繰り書や四半期決算書などの資料整理の効率化に向け、XBRL形式の採用に関心を示している。このため、融資を受ける企業側の対応が急がれる」と、XBRL形式に対応した改訂版会計ソフトなどの市場が伸びると予測する。
PCAでは、電子申告・納税システムに対応した財務会計ソフト「PCA会計7」の改訂版「V2(バージョン2)」を1月中に発売するほか、中堅企業向けのERP(基幹業務システム)パッケージソフト「PCA Dream21」も、機能改善の必要に応じ順次カスタマイズを進め、競合他社に先行した対応を検討中だ。
中堅・中小企業向けの業務システムなどを開発・販売するオービックビジネスコンサルタント(OBC)は、企業の基幹となる財務会計システム「勘定奉行21」をXBRL形式に、申告書作成システム「申告奉行21(法人税・地方税編)」と「申告奉行21(内訳書・概況書編)」をXML形式の電子申告システムに対応したバージョンを予定している。「国税庁の電子申告は、有料で電子証明書を取得する必要があり、電子申告への移行は緩やかに進むのではないか」(OBC関係者)と、冷静に受け止めている。
■「企業ニーズはまだまだ」の声も、いずれは“紙は不要”の時代に
一方、会計ソフトで約1万の会計事務所をユーザーに持つエプソンは、税理士法人や会計事務所、その顧問先企業の業務効率化やデータ統合化を支援するパッケージ「応援シリーズ」のうち、所得税申告ソフト「所得税顧問」より順次、電子申告に対応する。「応援シリーズ」ではオプションで電子申告ソフトを2月初旬に発売する予定で、各ソフトから申告に必要なデータを自動収集し、国税庁指定のXBRL形式で申告できるようにする。
エプソン販売は、電子申告時代に備え昨年5月から、会計事務所向けのソフト「財務応援Super」を購入した会計事務所と、「応援シリーズ」の「財務応援Lite」を持つ顧問先企業をインターネットデータセンター(IDC)で結び、会計データをセキュア(安全)な環境で送信するサービスを無償提供しているが、「このセキュアな環境(サービス)を活用して、顧問先企業と会計事務所間の申告データや電子署名の送信もできる」(勝俣剛志・ビジネスソリューショ営業部ビジネスソリューション企画課係長)という。
また、プリンタと連動し無地の用紙に「OCR申告書のカラー印刷」ができる会計事務所向けのシステムについては、電子申告の普及に伴い、紙書類(ドキュメント)の電子化ニーズが確実に高まると予測し、「当社の強みである複合機能を持つプリンタなどを生かしたソリューション展開を強化する」(勝俣係長)と、新たなサービスの検討を開始している。
各業務ソフト会社は、国税庁の電子申告システムに対するソフトの改定を急ぐが、PCAの水谷常務が主張する「銀行の融資業務でのXBRL利用拡大」については意見が分かれる。
OBCは今年から、UFJ銀行の中小企業向け融資「UFJビジネスローン」を、「勘定奉行21」から相談できるシステムを開発し、サービス開始で先行した。「顧客と金融機関からのニーズがあれば相談サービスの拡充を柔軟に行う」(OBC関係者)と、実用化を優先しつつ市場の反応を待っている。
PCAの水谷常務は、「中堅企業でも、連結子会社の財務諸表や取引明細をXBRL形式で交換することで、決算業務の合理化が図れる。また、XBRLには各勘定科目にタグ(荷札)がついているので、東証などが保有している財務諸表を集め、取引先の信用分析や倒産予測などが簡単にできるようになる」と、こうした付加価値の部分での競争が、業務ソフト会社間で2年後には始まると推測する。
しかし、「こうした分析ツールを中堅企業が使いこなせる環境にはない」(大手業務ソフト会社)と、疑心暗鬼な見解も多い。国税庁の電子申告・納税システムでXBRL形式を使用する企業がどの程度拡大するかどうかで、XBRLを巡る業務ソフト各社の付加価値戦略への対応が分かれそうだ。
国税庁は「電子申告・納税システム」を今年2月から一部で開始するが、これらに向け業務ソフトウェア各社が電子データ用に標準化された言語「XBRL」への対応を急いでいる。国税庁への財務諸表などの提出で、XBRL形式が採用されたためだ。XBRLは、各種財務報告用の情報を、電子ベースで作成・流通・利用する上で標準化されたXMLベースの言語。業務ソフト11社は、それぞれ申告系ソフトのXBRL対応版を今年初めに出荷開始する予定だ。今後は、XBRLを用いた取引先企業の信用分析など、付加価値を付けたソフト開発競争が展開されそうで、各社の対応が注目される。(谷畑良胤●取材/文)
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