その他
プリンタメーカー海外進出 巨大市場に挑む日本メーカー各社
2004/01/05 15:00
週刊BCN 2004年01月05日vol.1021掲載
パソコンの販売が頭打ちとなり、販売店の主力は周辺機器へと移行した。そのなかでもプリンタは、最も市場が大きいと言われ、個人・企業を問わず、異なった環境で多様な機種が利用されている。プリンタについては、米国ではヒューレット・パッカード(HP)が大きなシェアを確保しているが、地元メーカーのみならず、日本メーカーも各社各様の戦略をもって米国巨大市場に参入している。米国における日本製プリンタメーカーの現状を取材した。(米ニューヨーク発)(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
米国で善戦
■各社、優位点をアピール
日本の主要なプリンタメーカーはそのほとんどが米国に拠点を置いている。そのなかで、独自の戦略で米国でのシェア確保を目指している日本メーカー数社に話を聞いた。取材したのは、沖データ、ブラザー工業、京セラミタ、リコーの4社。
沖データは、マイクロラインという名前とともに独自技術によるLEDプリンタが好評。2004年に米国進出50周年を迎えるブラザー工業の製品は大手のオフィスやスーパーストアーで人気だ。京セラミタは、前身の技術資産を十分に活用しながらも、新しい企業としての地位を確保している。また、リコーもコピー分野での知名度がそのままプリンタでも信頼感となって企業イメージに寄与している。
米国でのプリンタ市場はその半分以上をHPが占めている。出力速度の速さや高画像品質はもはや当然で、それだけでは市場で新たな地位を確保するのは難しい。そのため、各社とも独自の優位点をアピールしている。「LEDプリンタ技術やポストスクリプトへの順応性が評価されている」(沖データアメリカ・鍋島可馨社長)。「ユーザーとの密な接触による製品開発への反映が、結果として製品の顧客満足度に繋がっている」(ブラザーインターナショナル・藤本智之プリンタ製品マネージャー)。コピー機の世界からの参入メーカーも、京セラミタのコスト比較による具体的な数字での他社優位性の確立、リコーのドキュメント関連ソリューション提供サービス分野への取り組みなど、それぞれ独自の戦略で市場争いを展開している。
■環境面にも配慮
市場への流通経路の確保は海外からの進出組には大きな課題だ。主として卸業者を利用する沖データ、直販を前提とするリコー、双方を使い分けている京セラミタやブラザーと戦略は各社各様だ。米国では大手のオフィスサプライチェーン店も多く、販売量も期待できる。従って、直販イコールコスト削減/利益向上とはならず、各社とも各種の状況を見ての判断だ。
SOHO-中規模オフィスへの対応として、MFP(マルチファンクショナルプリンタ)と呼ばれる多機能一体型製品が多いのも米国市場の特徴だ。プリンタ・FAX・コピー機・スキャナの機能を併せもつMFPは、省スペース・省コストの点から人気が高い。しかしながら、京セラミタは中-大規模のオフィスでは、プリンタとMFPはそれぞれ別路線で成長していくと見ており、この点ではプリンタをネットワーク内の1つの端末と見るリコーや、中規模オフィス環境でのソリューションとしてMFPを重要視するブラザー、専用機としての高品質の維持を優先する沖データなど、各社に微妙な違いがある。
環境問題への対応も大きな課題だ。各社とも製品自体は世界共通である場合が多く、これは他のIT機器と同様。米国ではその社会的意義から環境への対応は重要な評価基準とされる。そのため、全ての製品が高度の環境適応品であることが必須となり、いずれも製品のリサイクルや工場のISO規格認定など高度の環境対策を行っている。
近年、IBMやHPなどの大手は製品付帯サービスにも力を注いでおり、これは業界全体の流れとも言える。
オフィスユースのコピー機をもつリコーと京セラミタはこの分野の将来性が非常に有望と考えている。
「単純なハードウェア製品販売ではなく、業務改善のソリューションを組み合わせた提案で、結果的にハードウェアの販売にもつながり、より大規模な受注につながってきている」(リコーコーポレーション・野中秀嗣ヴァイスプレジデント・オブ・マーケティング)。
「付帯サービス市場は戦略の重要な一部分であり、近い将来大きな収益の柱として成長していくだろう」(京セラミタアメリカ・マイケル・ピエトゥルンティ・マーケティング・ヴァイスプレジデント)。
特にリコーは、オフィスにおけるドキュメントマネジメント分野でのリーダーを目指し、同分野の有力企業の買収をはじめ、将来への期待が大きい。
■本格的な競争はこれから
オフィスのネット化が進んだ現在では、ネットへの親和性やドライバのカスタマイズなど、既存の環境との自由なやり取りを前提とされることが多い。この点で京セラミタはIBMとの提携で各種のサービス体制を整えている。沖データはドットマトリックスプリンタの時代から近年のポストスクリプト言語まで、その技術レベルの高さは定評だ。リコーのドキュメントマネジメントシステムは、ネットでの使用を前提としたものであるし、ブラザーも含めた全てが社内にカスタマイズ部門をもち、LANやワイヤレスへの対応なども急ピッチで進んでいる。特に京セラミタは、WiFiに積極的だ。
今回取材した4社ともに日本人社員はわずかであり、その点では既に米国企業といってよい。ネットインフラの整備やオンラインでの業務も一般化した。そうしたなか、これからようやく本格的な競争が始まるといえるだろう。
パソコンの販売が頭打ちとなり、販売店の主力は周辺機器へと移行した。そのなかでもプリンタは、最も市場が大きいと言われ、個人・企業を問わず、異なった環境で多様な機種が利用されている。プリンタについては、米国ではヒューレット・パッカード(HP)が大きなシェアを確保しているが、地元メーカーのみならず、日本メーカーも各社各様の戦略をもって米国巨大市場に参入している。米国における日本製プリンタメーカーの現状を取材した。(米ニューヨーク発)(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…