その他
IT産業振興に力を入れる北海道 「e-シルクロード2004コンベンション」開催
2004/03/08 21:12
週刊BCN 2004年03月08日vol.1030掲載
北海道がIT産業振興で動き出した。2月26、27の両日、札幌市内の札幌コンベンションセンターで、中国、韓国、東南アジアからIT産業や行政関係の代表を招いて、「e-シルクロード2004コンベンション」が開かれ、札幌から韓国、中国を経て東南アジア、さらにインドに至るIT産業の連携について活発に議論が交わされた。また、北海道全体の自治体IT化を推進している「電子自治体実証プロジェクト協議会」はNPO(特定非営利団体)法人への移行を機に、参加企業を現在の約60社から年内にも100社程度に増やすことを狙っている。道内のIT企業活性化のために、海外との連携や自治体IT化への地元企業参加を促進する動きが活発化している。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
中国や韓国、東南アジアと交流促進へ
■産官学協力をアピール、ビジネス拡大の段階へ
「e-シルクロード2004コンベンション」は、2001年度の「e-シルクロードin札幌」、02年度の「札幌イノベーションセミナー」に続き、札幌では3回目の開催となる。02年度には中国・深市で「e-シルクロードin深」も開かれている。
今回は、韓国・大田(テジョン)広域市のヨム・ホンチョル市長を招いたほか、チョン・キルナム韓国科学技術院(KAIST)教授、ジャン・ジョンファン培材大学教授・情報通信大学院長、中国からは王翔坤・瀋陽市副市長、張克・大連高新技術産業園区管理委員会副主任、タイからはロム・ヒランプルク・ソフトウェアパーク理事など、各地のIT産業振興に深く関わっている多彩な顔ぶれが並んだ。
札幌市は韓国・大田広域市と今回のコンベンション開催を機に、上田文雄・札幌市長とヨム・ホンチョル大田広域市長の間で、経済交流促進のための覚書を交わした。e-シルクロード構想を基に行政、大学、研究機関、企業などの間で情報交換を活発化するとともに、人材交流を進めようというのが狙いだ。
道経済は、大手メーカーの生産集約などによる工場の撤退や操業停止で、長く低迷が続いている。IT産業振興を狙って、札幌駅北口地域を「サッポロバレー」と称して企業誘致やベンチャー支援を図っているが、軌道に乗っていないのが実情だ。e-シルクロードは札幌市もバックアップしており、「行政が積極的に関わらなければ、(e-シルクロード・コンベンションのような)ここまでの規模のイベントはできない。産官学の協力はさらに深まっている」(青木由直・北海道大学大学院教授)と、札幌では3者の協力がうまく進んでいることを強調している。
韓国・大田広域市は、大徳バレーを中心にIT企業誘致と起業を支援している。03年までのベンチャー企業数は約800社で、サッポロバレーの300社を軽く上回る。札幌市との経済交流を深めることについて、ヨム・ホンチョル大田広域市長は「札幌市と大田広域市の間での人材や技術の交流、ビジネスでの連携だけでなく、文化的な交流も促進されるだろう」と期待を込めて語る。BCNの取材に対しても、「大田広域市はIT産業、ベンチャーの活性化を図っており、どんどん先進的な技術開発や起業が進んでいく」と述べ、e-シルクロード構想の中でも重要なポジションを占めると強調する。
一方、人口186万人と北海道全体の5分の1を占める札幌市は、製造業の低迷から、IT産業振興への比重を高めてきた。札幌市役所でコールセンターを設けたほか、国内各企業向けにコールセンター誘致を訴えている。町田隆敏・札幌市経済局産業振興部産業開発課長は、「IT産業振興も道経済発展の重要なテーマ。ソフトウェアだけに注力するわけではなく、IT全般の振興を図っていく」と、IT産業の進出や北海道発のビジネス拡大を重視しているという。
そうした面から、e-シルクロード構想により国際交流をベースにビジネスが生まれることに対する期待も高い。会期中に開かれたパネルディスカッションの中で、中国からの参加者の1人は、「もっとビジネスの話をする時期に来ているのではないか」とする意見を述べた。青木北大大学院教授も、「実際にビジネスミーティングも開いているのに、一部の企業は製品を展示するだけ。それではビジネスにはつながらないだろう」と語気を強める。韓国企業や中国からの出展者が積極的に技術や製品を紹介していただけに、その意識の差は大きく映った。
■進む自治体の電子化、地場企業を積極的に活用
北海道のIT産業活性化の動きで見逃せないのは、「e-Japan戦略」に沿って自治体の電子化が進むなかで、北海道の地場企業を積極的に活用しようという政策だ。この受け皿として01年度から今年度までの3年間、道庁が活動資金を補助して、電子自治体実証プロジェクト協議会に地元企業や大手ベンダーなどが結集。オープンソースを活用した自治体システムやビジネスモデルを、道庁に対して提案してきた。
補助金は今年度で終了となるが、新年度からはNPO法人「HEART」として活動を継続していく。HEARTの意味は、「北海道(Hokkaido)で互いに(Each Other)行動し(Act)活性化(Revitalize)しましょう、まちを人を(Town&People)」とか。すでにメンバーは、「約60社に増えた。今後、道庁を中心とした共通基盤ができ自治体アプリケーションの開発が進めばメンバー企業も増える。年内には100社程度を見込んでいる」(杉本強・電子自治体実証プロジェクト協議会事務局長)という。
杉本事務局長は、北海道の地元企業の参加が増えていることについて、「これまでは札幌市周辺が中心だったが、道内の他の地域にも広がっている。自治体ビジネスが本格化することで情報や技術の収集だけでなく、実際のビジネスを獲得するために協議会への参加が増えている」としている。道内のIT関連企業振興のためには、まずビジネスを立ち上げることが不可欠、と訴えているわけだ。
北海道には、北海道庁が支援をスタートさせた電子自治体実証プロジェクトのほかに、札幌市が支援するNPO法人「札幌市IT振興普及推進協議会(ユニゾン)」やe-シルクロード、さらに北海道経済産業局が02年5月に立ち上げた「北海道情報産業クラスター・フォーラム」(参加企業270社)とその事務局を務める道所管の財団法人「北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)」がある。それぞれ、独自の立場で産学官の協力を進め、IT産業振興を図ってきた。
道内のあるIT関連企業首脳によれば、「最近、ようやくそれらが連携できる可能性が出てきた」そうだ。それぞれに関わる企業も同じ見解であれば、協力できるかどうかは役所次第ということになる。「北海道のIT産業振興という目的は同じ」で結集できるかどうかが課題になる。
e-シルクロード構想でアジアのIT産業の連携の中心となり、自治体向け情報システム事業でも地場IT企業の活用を推進していく。北海道のIT産業活性化にかける思いや施策は、立場を超えて共通化されなければならないだろう。
北海道がIT産業振興で動き出した。2月26、27の両日、札幌市内の札幌コンベンションセンターで、中国、韓国、東南アジアからIT産業や行政関係の代表を招いて、「e-シルクロード2004コンベンション」が開かれ、札幌から韓国、中国を経て東南アジア、さらにインドに至るIT産業の連携について活発に議論が交わされた。また、北海道全体の自治体IT化を推進している「電子自治体実証プロジェクト協議会」はNPO(特定非営利団体)法人への移行を機に、参加企業を現在の約60社から年内にも100社程度に増やすことを狙っている。道内のIT企業活性化のために、海外との連携や自治体IT化への地元企業参加を促進する動きが活発化している。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
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