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米IBMのパソコン事業売却 国内IT企業に衝撃
2004/12/20 21:12
週刊BCN 2004年12月20日vol.1069掲載
1年を締めくくるには余りあるほどのインパクトをもたらした米IBMのパソコン事業売却発表。その衝撃が日本のIT業界をなおも巡っている。コモディティ(日用品)化するパソコンに差別化要素を見出せず、見切りをつけたとも取れる今回の売却劇。競合パソコンメーカーに戦略転換はあるのか。IBM製パソコンを担ぐシステムインテグレータは、この事実をどのように受け止めているのか。これを好機と捉える企業、不安を口にする企業など、各社の見解はさまざまだ。
日本の大手メーカー「パソコン継続」強調
米IBMは、パソコン事業を現金と株式合わせ12億5000万ドル(約1300億円)で中国パソコン最大手の聯想集団(レノボグループ)に売却すると発表。両社は今後、米ニューヨーク州にパソコン事業の統合会社を設立。世界第3位のパソコンメーカーが誕生することになる。
東芝の西田厚聰・執行役専務PC&ネットワーク社社長は、「ソフトとサービスに軸を置いているIBMの戦略のなかでは、パソコンの位置付けは極めて小さくなったのだろう。売却は考えられた」と話す。また、富士通の黒川博昭社長も、「(IBMは)成長性に徹底的にこだわっている企業。利益率の低い事業だけに、売却の可能性はあると以前から予測していた」と、売却劇を冷静に受け止める。
そのうえで、黒川社長は「パソコンはエンドユーザーとの大事な接点。利益を出すのに苦労しているが、やめるつもりはない」と事業継続を強調。NECの金杉明信社長も、「コンピュータと通信の融合を考えた時に、クライアント(PC)の役割は大きい。全体のポートフォリオのなかで、パソコンの位置付けはまだまだ大きい」と語る。
NECの津田芳明・執行役員常務は、「IBMのロゴが残るとはいえ、レノボグループの日本におけるブランド力は低い。サポートを不安視している顧客も多いだろう。当社にとってはプラスに作用する可能性が高い」と、ビジネスチャンスと捉える。老舗パソコンメーカーの事実上の撤退にも、国内大手メーカーは共通して、パソコン事業継続の意思を改めて強調している。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、今後の日本市場でのパソコンビジネスについて、「具体的な体制はこれから詰める」(日本IBMの向井宏之・理事PC&プリンティング事業部長)としているが、「世界第2位のITマーケットだけに、日本に法人をつくらずに事業展開することは困難だろう」との見解を大歳卓麻社長は示す。
向井理事は、「パソコン事業担当者は新会社に転籍し、研究開発から営業、マーケティング、サポート、そしてThinkブランドもすべて新会社に移行することになる。窓口が新会社に変わるだけで、中身はまったく変わらない」と主張。ユーザーやパートナー向けに不安要素がないことをアピールする。さらに、「レノボグループの効率的な製造インフラを活用し、コストをさらに抑えたThinkPadを提供できる」と述べる。
確かに、日本IBMのビジネスパートナーからは、低価格化したThinkPadに期待を寄せている企業もいる。日本オフィス・システム(NOS)の尾﨑嵩社長は、「顧客満足度を高めるためには高品質は当然だが、価格メリットも必要。これまでIBM製パソコンが高価だったため、顧客の要望から、やむを得ず他社の低価格パソコンを販売することもあった。IBMとレノボが手を組んだことで、高品質と低価格の両方を手にしたことになり、商売がさらにやりやすくなる」と話す。
その一方で、日本ビジネスコンピューター(JBCC)の石黒和義社長は、「IBM製だからThinkPadを選ぶという顧客は多い。今回の売却で顧客から不安の声が上がっているのは事実。顧客の要望次第では、IBM以外のパソコンを販売する可能性もないことはない」と示唆する。
日本IBMの髙野明・理事アライアンス事業部長も、「価格の下がったThinkPadに期待する声はある。だが、不安を口にするパートナーは多い」とし、大手パートナー企業に出向き、今後の体制やビジネスモデルを説明することに力を注いでいるという。
「売却しても変わらない」と主張する日本IBMだが、サポートや品質、ブランド力の低下を懸念し、不安を抱えているユーザーやパートナーがいるのは事実。12月8日の発表以降、まだ法人化の見通しなどについて具体的な計画を発表していないだけに、「Think Pad離れが進む」との見方は強い。
1年を締めくくるには余りあるほどのインパクトをもたらした米IBMのパソコン事業売却発表。その衝撃が日本のIT業界をなおも巡っている。コモディティ(日用品)化するパソコンに差別化要素を見出せず、見切りをつけたとも取れる今回の売却劇。競合パソコンメーカーに戦略転換はあるのか。IBM製パソコンを担ぐシステムインテグレータは、この事実をどのように受け止めているのか。これを好機と捉える企業、不安を口にする企業など、各社の見解はさまざまだ。
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