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エレクトロニクス事業の復活なるか!? ソニー、中期経営方針を発表
2005/10/03 21:10
週刊BCN 2005年10月03日vol.1107掲載
ソニー(ハワード・ストリンガー会長兼CEO)はこのほど発表した中期経営方針の中で、最優先課題であるエレクトロニクス事業の復活に向け、重要分野の意思決定権限を中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOに集中する体制を敷くことを決めた。これに伴い、“ソニーらしい”先進経営の象徴ともいえた社内カンパニー制を廃止。今後は事業本部制により各本部がお互いに連携しながら、それぞれの事業領域に集中できる体制に移行する。中期経営方針では、エレクトロニクス事業の業績回復により2007年度(08年3月期)の連結売上高8兆円、連結営業利益率5%を目指していくが、その成否はテレビ事業の再建をどこまで進められるかにかかっているようだ。(佐相彰彦●取材/文)
07年度に売上高8兆円、営業利益率5%へ
■社内カンパニー制に終止符
中期経営方針では、エレクトロニクス、ゲーム、エンタテインメントの3事業をコア事業に位置づけ構造改革を実施する。なかでも、「テレビの復活なくしてソニーの復活なし」(中鉢社長兼エレクトロニクスCEO)と訴えるように、本業であるエレクトロニクス事業の立て直しが最優先課題となっている。
エレクトロニクス事業の組織改革では、90年代に他社に先駆けて導入した社内カンパニー制を廃止する。これにより、「激しい市場競争に直面するなか、分散された構造を排除し、業績回復に向けて全社を挙げてビジネスを展開していく」(ストリンガー会長兼CEO)体制を鮮明に打ち出す。
これまで3ネットワークカンパニー8事業組織に分かれていたコンシューマエレクトロニクス分野に関しては、「テレビ事業本部」、「ビデオ事業本部」、「デジタルイメージング事業本部」、「オーディオ事業本部」、「VAIO部門」の4事業本部1部門制に再編。加えて、商品戦略、生産戦略、販売戦略、技術戦略などを各執行役員が担当する体制を敷くことで、「シンプルな組織構成で、横串の連携機能を強化する」(同)ことを狙う。
しかも、「(カンパニー制の)高い壁により、これまでは組織間の連携が図れない、いわば“隣が見えない”状況が続いていた。しかし、事業本部制を採用することで全社一体となった迅速な指示が行えるという点で、エキサイティングなビジネスを展開できる」(同)と、出井伸之・前会長兼グループCEOが築いてきた路線と一線を画す方針であることを明確に打ち出している。
製造面などの強化策については、ディスプレイデバイス開発本部を新設し、次世代ディスプレイに位置づける有機EL(エレクロトルミネッセンス)の開発に集中。また、技術本部の新設によりソフトウェア開発体制を強化するとともに、今年度中に米国や中国にも開発拠点を設置する予定だ。このほか、今年度上期の時点で35%程度のHD(高精細)対応製品を07年度に75%程度まで引き上げる計画でいる。
■リストラなどコスト削減策が先行
コスト削減については、事業の絞り込みや本社・間接部門の効率化により、07年度末までに2000億円の削減を図る。15のカテゴリーを対象に不採算事業のアクションプランを今後策定し、縮小や撤退、他社との提携、事業売却などを実施。これと並行して07年度までに、製品モデル数を05年度比で20%削減するほか、製造拠点数を65か所から54か所に減らす。一連のコスト削減にともない、ワールドワイドで1万人のリストラを実施する。
今回の中期経営方針を通じ、ソニーは新経営体制移行後初めて、具体的な経営の立て直し策を打ち出した。しかし、この再生計画はコスト削減策が先行しており、エレクトロニクス事業復活のカギを握る“ソニーらしい”差別化製品の開発戦略については明確な案が示されなかった。
縮小や事業売却などを進める15カテゴリーについても、「ロボット事業は縮小する。(超高級ブランドの)クオリア事業は続行するが新規開発を行わない」(中鉢社長兼エレクトロニクスCEO)と述べるにとどめ、「現段階では具体的には言えない。徐々に明らかにしていく」(中鉢社長兼エレクトロニクスCEO)と、一歩踏み込んだコメントは避けた。
業績回復のカギを握るテレビ事業については、製造拠点の見直しや内製化率向上などで収益改善を徹底し、「06年度下期に黒字化を目指す」(同)という。ストリンガー・中鉢体制のもと、果たしてソニーはテレビを中心に魅力あるエレクトロニクス製品を再び市場に送り出すことができるか。その実現なくして“ソニーの復活”はあり得ない。
ソニー(ハワード・ストリンガー会長兼CEO)はこのほど発表した中期経営方針の中で、最優先課題であるエレクトロニクス事業の復活に向け、重要分野の意思決定権限を中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOに集中する体制を敷くことを決めた。これに伴い、“ソニーらしい”先進経営の象徴ともいえた社内カンパニー制を廃止。今後は事業本部制により各本部がお互いに連携しながら、それぞれの事業領域に集中できる体制に移行する。中期経営方針では、エレクトロニクス事業の業績回復により2007年度(08年3月期)の連結売上高8兆円、連結営業利益率5%を目指していくが、その成否はテレビ事業の再建をどこまで進められるかにかかっているようだ。(佐相彰彦●取材/文)
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