カシオ計算機(樫尾和雄社長)のプリンタ事業が順調な成長を続けている。「売上高は前年度(2005年3月期)に300億円の大台に乗せ、今年度も10-15%成長を目標にしているが、10%増の目途はついた」と自信を見せるのは、藁谷(わらがい)幸司・システムソリューション営業統轄部企画推進部ページプリンタ企画室室長だ。現状と当面の戦略を聞いた。
■小型化、高速化を追求 
同社がプリンタ事業に進出したのは85年で、96年に卓上型タンデム方式でフルカラー毎分12枚の当時としては世界最速の「SPEEDIA N4」を商品化、以来カラーページプリンタの小型化、高速化と積極的に取り組んできた。
「一般事務用途でのカラープリントのニーズ顕在化は時間がかかるだろう。しかし、カラーが必須の用途もたくさんあるはずで、それらをこまめに掘り起こしていこうというのが当社の基本方針で、そのためにどこにでも置ける小型化、また高速化には積極的に取り組んできた」と藁谷室長。
そうしたカラーニーズが顕在化している市場として同社があげるのは、金融・保険業、流通業、教育関連、製造関連、医療関連など。

「流通業では生鮮食料品のPOP印刷などのマーケットを開拓してきた。教育関連では、パソコン教室用のカラープリンタとして型番指定を受けるケースが非常に多く、特に小学校でのシェアは高い。医療関連のカラー薬袋印刷向けには専用機まで開発して対応している。金融・保険業の保険設計書などの用途は後発にはなったが、着実にシェアは確保している」と語るのは同企画室の西田公浩リーダー。
例えば、学校市場では、「40人もの生徒が一斉にプリント指示するので、高速印刷は絶対条件になる。しかも、指示を出してもすぐプリントが出てくるわけではないので、何度も何度もプリント指示するケースが頻出する。こうした際に備えて重複印刷防止用ソリューションを提供しているが、非常に好評だ」と西田リーダー。
■きめ細かくソリューション整備 
現在の主力機種は、7月に発売したA3/長尺紙/特殊紙対応でカラー33枚/分、モノクロ38枚/分の「N6000」(24万8000円)と、A4/長尺紙対応でカラー16枚/分、モノクロ24枚/分の「V1500」(14万8000円)。
タンデム機の世界では、一時期「世界最速競争」が華々しく展開されてきたが、「小型化と高速化を両立させることは難しい。大型化を図れば40枚の壁を突破することは可能だろうが、当面その路線は取らない」(藁谷室長)というのが同社の姿勢で、「高速化よりもきめ細かいソリューションの拡充に力を入れている」という。
帳票設計、電子帳票、プリントアウト管理、セキュリティ、データベース連携、ドキュメント統合管理、出力ログ管理などのソリューションを揃えているが、「もっと充実させていく」(藁谷室長)意向だ。
「N6000では、環境に優しく低ランニングコストを実現した回収協力トナー、人体にも優しい鉛フリーはんだ対応などで、エコロジー&エコノミーを強調してきたが、今後はセキュリテイが大きなテーマになるので、それに対応した新製品は近く出す」(藁谷室長)そうだ。
「いまでもセキュリティ対策は業界の先頭を走っている。プリントログ管理ツールでは実際に行われた印刷の履歴をページ単位で詳細に収集できるし、コピー牽制地紋印刷ツール、親展印刷機能などを提供している」と西田リーダーが補足する。
■好評な「ネットdeサポート」 また、他社にないサービスとして強調するのは、「ネットdeサポート」の保守体制。「プリンタの状態をインターネット経由で収集、紙詰まりを3回起こしたので予防した方がいいなど事前に手が打てる。特に販売店に好評なのは、消耗品の残量情報などがつかめることで、きめ細かいサポートにつながることだ」と藁谷室長は強調する。
同社の販売パートナーは約50社ほどだが、「カラーニーズが顕在化しているそれぞれの業種に強いところが多い。パートナー数を増やすよりも、現在のパートナーとの緊密度合いを強化していくことでシェアアップを図る」(藁谷室長)というのが当面の同社の姿勢だ。
現在、カラーページプリンタ業界の競争は厳しく、「モノクロプリンタからの置き換え」に全力を注ぐところもあるが、「今後もカラー必須市場を着実に開拓していく。また、早くに市場が顕在化したところでは、99年、00年に導入したユーザーの買い替えニーズが出ているので、こうしたリプレイス需要の確保にも全力を挙げる」(藁谷室長)意向だ。