薄型テレビ市場で「第3の薄型テレビ」として注目されているリアプロジェクションテレビの本格普及を狙い、セイコーエプソン、日本ビクター、ソニーなど大手メーカーが販売強化を図っている。画質の向上、低消費電力、大画面テレビの割安感を武器に、今年の年末商戦以降、来年の本格普及を狙って大画面薄型テレビ市場での攻勢をかけている。（田澤理恵●取材／文）

注目集める「第3の薄型テレビ」

■「拡大機運が高まっている」

　セイコーエプソンは、2004年5月に液晶リアプロジェクションテレビ「リビングステーション」を市場投入。販売については、店頭販売は行わず、セイコーエプソングループのエプソンダイレクトによる直接販売を行っている。

　昨年の市場参入で発表した初年度の販売目標は1万台としていたが、今年3月末までの10か月の販売実績は約2000台にとどまった。しかし、今年の夏商戦では、「今年6－7月の2か月で、昨年の販売実績である2000台をクリア」（吉崎宏典取締役）しており、予想を大きく上回る実績を達成した。10月12日には、価格を維持して高画質化や省エネなど機能強化を図った新製品を投入。今年度（06年3月期）は1万5000台の販売を目指す。

　昨年のエプソン参入後、大手メーカーでは三洋電機、日本ビクター、三菱電機などがプロジェクションテレビを投入。メーカーが増えたことも追い風となって、リアプロ市場の「拡大機運が高まっている」（吉崎取締役）として、冬商戦に向けても弾みをつけていく狙いだ。

■日本ビクターやソニーも参入

　日本ビクターは、今年5月にプロジェクションテレビ「ビッグスクリーンエグゼ」2機種を投入。「1000店以上の家電量販店で販売」（広報担当者）している。今年10月中旬から順次販売する新製品をフルハイビジョン対応の上位機種として、現行のラインアップに加える。国内の販売目標は今年度「2万台を目指している」という。

　日本ビクターでは、ビッグスクリーンエグゼを「大画面テレビ商戦の要」と位置づけている。ソニーも新ブランド「ブラビア」で2機種投入したが、これに対してもビクターから見れば市場活性化のために、「参入メーカーが増えることは大歓迎」（同）だという。10月4－8日に千葉・美浜区の幕張メッセで開催されたCEATECジャパンの日本ビクターのブースでは、新開発したフルハイビジョンデバイス「D-ILA」による高画質を強みに差別化をアピールした。

　ソニーもプロジェクションテレビを大画面テレビマーケット拡大の重要な軸と位置づけている。CEATECジャパンのブースでは、「これまでのリアプロの安かろう悪かろうというイメージを払拭するために画質を比較」（ソニー関係者）するためにプラズマテレビと「ブラビア」Eシリーズを2つ並べてリアプロの画質が向上したことをアピールした。

　エプソンやビクターは、今年を“リアプロ元年”と位置づけている。これまでのリアプロの弱点を克服し、高画質化によりこれまでのリアプロのイメージを向上させるのに注力してきた。大画面テレビ市場では、プラズマテレビの店頭実売価格はすでに1インチ1万円を切っている。今後は、リアプロの価格優位性以外でも高画質化により本格的に対抗していく狙いだ。

　BCNランキングによる42V型以上の大画面テレビの今年10月3－9日の週と前年同期を見てみると、大画面テレビ全体の構成比は、前年同期比でプラズマが16.3ポイントダウンしている一方、液晶が14.3ポイントアップ、リアプロも2.0ポイントアップしている。

　家電量販店では、ビクターのほか、ソニーのブラビアEシリーズの展示も始まっており、エプソンダイレクトも体感サテライトを拡充させている。各社ともテレビ画面の大型化の波に乗り、年末商戦を機に来年の本格普及を狙っている。