「下請け」脱却への布石となるか

　システム開発などを手がける豆蔵（荻原紀男社長）が昨年9月に設立した関連会社、UFDホールディングス（UFD、奥井規晶社長）が、中小ITサービス企業の〝救世主〟となりえるか、IT業界で注目されている。UFDは、持株会社として技術力のある中小ITサービス企業をフランチャイズのように束ね、事業体としての規模の大きさや信用力を示して官公庁向けなどの案件を直接的に受注することなどを目指して設立された。設立から半年、UFDの取り組みが「『下請け受注構造』に悩む中小ITサービス企業を、変えられるのでは…」との期待も一部に出ている。　

　設立当初は豆蔵が2億円（出資金の95・2％）を出資。現在までに、趣旨に賛同したSIerやソフト開発会社、ITコンサルティング会社など4社が子会社として参加。参加企業はUFDと株式交換を行い、UFDの株主に名を連ねている。UFDは2007年3月までに参加企業を20社にして株式上場を目指す。参加企業は、UFDの株を担保に融資を受けたり、売却するなどで資金調達が容易になる。

　参加企業の財務・経理などの間接部門や連結経営計画の立案、IT人材募集などの機能をUFDが担当し、コスト削減を支援するほか、第三者のファイナンス会社が資金調達計画を練る。「参加企業のオーナーは、余計な間接コストを気にせず、経営に専念できる」（荻原社長）と、「ヒト、モノ、カネ」の面倒をグループで見ることで、中小ITサービス企業が本来の業務に専念し、力を存分に発揮できる環境を提供する仕組みだ。

　UFDには、参加企業の経営者らによる「経営委員会」と「投資委員会」が存在する。後者は資金調達の計画を立案。前者は参加企業のスキルやノウハウなどリソースを把握し、受注した案件を配分するほか、各社の営業担当が知恵を絞り、ターゲットとする案件を探す役割を担う。現在までに、受注できた事例はないが、自治体や金融など大型案件を中心に獲得を狙っていくという。

　中小ITサービス企業は、大半が有力な資産を保有していない。自社株は、未公開株なので売買できず、すぐにはキャッシュフローに結びつかない。「資金調達などの面でも、株式上場の必要性が高いのがIT業界」と、公認会計士・税理士の資格をもつ荻原社長は指摘する。しかし、株式上場を果たせる企業は、「50社に1社の確率」という狭き門。それだけに、UFDの存在意義があるという主張だ。

　豆蔵はUFDが上場して、株価が上がれば利益を得られる。それだけでなく、本業であるシステム開発の標準化やオブジェクト指向の導入、技術者の育成などを支援することで、利潤を得る対象を拡大できる。最近では、マイクロソフトやサン・マイクロシステムズなどのベンダーと勉強会を開き、どうすれば日本の「下請け構造」を改革することができるのか議論を開始しているという。

　UFDは、参加企業を募っている。累積赤字があっても1、2年で単年度黒字化できると見込めれば、条件をクリアできる。現在の4社に加え、ネットワークやサポート企業などの参画を進め、システム開発の上流から下流までをグループ全体で揃え、大手ITベンダーのノウハウと同等の力量を備えることを狙う。

　「下請け」脱却に向けた政官業の動きは活発化しているが、未だ突破口を見いだせていない。「ライブドア事件」以降、株式交換や持株会社制は「マネーゲームでは」との疑念がある。しかし、UFDに参加できる企業は、デューデリジェンス（詳細な財務調査）を経て実態を伴っており、趣旨も明確で、ひとつの方向性を打ち出しているといえる。 谷畑良胤●取材／文