SI開発が過去最高も、国の後押し必要

　電子情報技術産業協会（JEITA、秋草直之会長）の国内「2005年度ソフトウェアおよびソリューションサービス市場規模調査」（JEITA加盟11社）によると、「SI開発」の前年度比伸び率が過去最高の105％を記録した。これに「ソフト」「アウトソーシングその他サービス」を加えた市場全体の規模は、5兆3069億円で前年度比102％。同調査の責任者、伊藤大挙・委員長は「今年度も、名目経済成長率（約2％と予測）と同率で成長し、5兆4000億円を超える」と、引き続き成長傾向にはあると予測する。ただ、国内総生産（GDP）に占める企業のIT投資比率は欧米に比べ低く、「国に対し、IT投資に関する税優遇措置などを要望する」。国内企業が「攻めの経営」に転じているなかで、依然としてIT投資で国のバックアップが必要なようだ。

　「SI開発」（コンサルティングやソリューション）が02年度の調査開始以来、最高の伸び率になった理由について、伊藤委員長は「業種別の傾向は捕捉していないが、公共は全体的に減少しているものの、金融、製造、流通業界が堅調」と傾向を説明した。「アウトソーシングその他サービス」（リモート監視、ハード・ソフト保守など）は、04年度に大幅に減少（6ポイント減）したのとは一変し、今年度は前年度比105％の2兆551億円と復調傾向を示した。一方、「ソフト」は、調査対象企業が「メインフレーマー」であるためか、「汎用機のソフト開発が年々減少する」状況下で、前年度比87％の6855億円と低調だ。

　調査開始の02年度は、「ITバブル」が崩壊し、ハードウェアで底なしの「低価格競争」が勃発したころだ。それを裏づけるように、同調査では「アウトソーシングその他サービス」が03年度には、前年度比116％に急成長している。

　JEITAによると、05年度の「ハード」は、前年度比98％で2兆6524億円。これにソフト・ソリューションサービスを加えると、IT市場全体は約8兆円になる。「（高価格の）汎用機から（低価格の）サーバーへ移行したが、出荷台数自体は急激には減っていない。むしろ、企業がソフトやアウトソーシングを選択することに価値を見いだしている」（伊藤委員長）と、情報機器メーカーが時代に合わせて変化する必要性を問う。

　調査は、NECや富士通、日本ユニシスなどが対象。NTTデータや野村総合研究所などが加わる情報サービス産業協会（JISA）などが発表する統計に比べ、全体の売上高は低い。ただ、JEITAは「元請けと下請けの売上高をダブルカウントする恐れがない」ため、正確性の高いデータを算出できているという。

　調査対象のIT企業はここ数年、「不採算案件の排除」や「低価格路線の克服」に向けて損益管理を徹底するなど、懸命に構造改革に取り組んできた。だが、その努力は果たして報われているのか。1年前のデータだが、「情報化白書」によると、GDPに対するIT投資比率は、米国3.5％に対し、日本が2.0％と世界平均以下だ。JEITAはIT投資に関する税優遇策を国に要望し続けている。今回の調査結果を基に、国への圧力をもっと強めるべきだ。