週刊BCNが国内IT・流通業界62社の経営トップに2007年の景気動向を天気図に例えて聞いたところ、「晴れ/ときどき曇り」との回答が主流となった。上場企業を中心とした「内部統制」の動きは、旺盛なIT需要を喚起する可能性がある。未上場企業でさえ、これを機にシステムの「全体最適化」への傾向が強まり、SIerや業務ソフトウェアなどを中心に、おおむね「好天」に恵まれる。「好天」が際立つ開発系SIerは、予報が「快晴」。人手不足に陥るほど受注環境は活況だ。逆に、ネットワーク系販社は、機器の単価下落などの影響で、大半が前半を「曇り」とする厳しい状況にある。今年は確実に需要を確保し、その収益で「次世代」に向けて準備を整える年になりそうである。
「晴れ/ときどき曇り」
開発系SIer、業務ソフトは「快晴」
【IT・流通業界の分類】 天気図では、IT・流通業界を次の7業界に分類した。システム構築や受託ソフトウェア開発を行う
「開発系SIer」、パソコンやサーバーを含めたソリューションを販売する
「販売系SIer」、ERPなど業務ソフトを開発・販売する
「業務ソフト」、スイッチやルータなどネットワーク機器を販売する
「ネットワーク系販社」、ハードやシステムなどの保守・メンテナンスを行う
「保守サービス」、流通・卸の
「ディストリビュータ」、プリンタやスキャナなどを開発・販売する
「プリンタベンダー」の分類である。
国内IT・流通業界で最も需要が高まりそうなのが
「開発系SIer」。活発な受注環境を背景に「ソフト開発の需要に供給が追いつかない」という嬉しい悲鳴が聞かれる。ただ、一時期の「不採算案件」続出を苦い経験に、プロジェクト管理を確立しつつあるとはいえ、利益率は依然高まらず、「日照り続きの“干ばつ”」になる懸念もある。
「開発系SIer」と同様に「快晴」に近い「晴れ」となるのが
「業務ソフト」である。「内部統制」を強化するうえで、「ERP(統合基幹業務システム)の導入が最も効果的」との認識が広まっており、これを“追い風”に需要を喚起できそうだ。業務ソフト業界の中堅中小企業(SMB)向けに限れば、前年比10-25%の伸びを期待。いずれにしても、2ケタ成長は確実な情勢である。
「販売系SIer」は、パソコンやサーバーの単価下落に悩まされたが、後半は「内部統制」に伴うセキュリティ機器や文書管理関連の機器やツールなどの需要増で盛り返した。中堅企業のITアウトソーシングなど、新たなIT投資もあって、07年を「晴れ」とみるベンダーがほとんど。一服感のあったパソコンも、マイクロソフトの新OS「Vista」の登場などで、必然的にリプレース需要が増え、これに関連したソリューション提案の機会に恵まれる。
「販売系SIer」と同じく、
「ディストリビュータ」も「Vista」の買い換え需要に期待する業界のひとつ。同業界では、「薄日」が差すとの見方が大勢を占める。また、ネットワーク機器を活用した新たな流通・卸を創出する動きが活発化しており、「Vista」の波に乗り、パートナー向けに新味のある提案ができれば、好転するきっかけがつくれそうだ。
一方、07年前半を「曇り」と捉えているのは、
「ネットワーク系販社」と
「保守サービス」。ネットワーク機器は前半にハードの低価格化が進むとの予測が大半を占めた。だが、IP網が企業システムの重要インフラとなり、新しい事業に着手することで活路を見いだそうとする動きが目立つ。
「保守サービス」は、ここ数年続くサービス単価下落幅が縮小したものの、下落傾向から脱せずにいる。しかし、システムのアウトソーシングや遠隔監視など、単価下落に対応した新サービスを生み出し、この局面を脱しようと懸命。両業界とも、今年後半は「晴れ」として、来年以降の需要拡大に期待する。
「プリンタベンダー」は昨年、「内部統制」で初期に整備する項目にあげられた文書管理の強化などで、全体的に売り上げが伸びた。今年前半は、中小企業やSOHO向けが単価下落の影響で「曇り」となるが、カラーのデジタル複合機(MFP)を中心に需要は活発で、後半は「晴れ」に転じそうである。