ウェブ直販サイトの開設やコンパクトサーバーの投入、プロモーション費用の増大などの施策を打ってきた富士通（黒川博昭社長）のIA（PC）サーバー事業。今年度（2007年3月期）当初は目標出荷台数を前年同期比約2万台増の9万5000台に設定したが、その成果はいかに──。富士通の今年度のIAサーバー事業を振り返るとともに来年度の施策を探る。

　富士通は当初掲げた今年度の出荷台数9万5000台を下方修正して、7万8000台としている。前年同期比では1500台の積み増しにとどまる見込みだ。昨年6月下旬に始めた直販サイト「WEB MART PCサーバ」の販売も目標数値3000台に届かないようだ。

　堀江信久・プラットフォームソリューションセンタープロダクトマーケティング統括部PRIMERGY部長は、その理由をIAサーバー市場が期首に想定していた伸び率を下回ったことをあげた。シェアを伸ばしたNECや日本ヒューレット・パッカード（日本HP）のように、大型案件の獲得がなかったこともマイナス要因とみている。

　調査会社のノークリサーチによると今年度上期（4－9月）、NECは公共機関向けに約2万2000台の納入が決まり、日本HPは流通業向けに約5000台の案件を獲得している。IAサーバー市場全体は年間60万台弱の出荷台数で、大型案件の獲得状況がシェア変動を大きく左右する特徴を持つため、大型案件のなかった富士通は他社の後塵を拝したわけだ。

　来年度の具体的目標数値は明言を避けているものの、「2ケタ成長は達成したい」（堀江部長）との意気込みをみせる。製品面では、昨年12月下旬に発売した世界最少の設置面積と騒音レベルが32デシベルという付加価値の高いコンパクトサーバーを拡販するほか、来年度第1四半期にブレードサーバーの新モデルも投入する計画だ。

　一方、販売面では販社向け施策として見積もりの作成を代行する組織「見積もりセンター」を2月に開設、販社のビジネス支援体制を整えた。また、2月にサーバシステム事業本部長にユビキタスプロダクトビジネスグループ長を務めていた伊藤公久経営執行役常務が就任し、来年度の事業施策を詰めている最中という。

　ノークリサーチによると富士通のIAサーバーの台数シェアは4位。競合激しい市場環境でシェアを伸ばせるかは不透明だが、「外資にはない販社網を活性化させれば上位に食い込む可能性を十分に秘めている」との声もある。