「リセラー1000社獲得」の成果は

　「リセラー（販売代理店）を新規で1000社増やします」──。

昨年5月、日本IBMの高橋慎介・執行役員パートナー事業担当はそう宣言した。販売が伸び悩むIA（PC）サーバーの挽回施策としてぶち上げた挑戦的な数字。あれから10か月弱が経った。果たしてその達成状況はどうなのか。

　「昨年10月中旬に新規リセラー1000社は獲得できた。まずは先行ベンダーを追撃する〝下準備〟は整ったとの感触だ」

　高橋執行役員は、2月上旬時点でのインタビューにこう答えている。昨年5月に発表した時の目標達成時期は、2006年内だったことを考えれば、新施策は順調に進んでいるようにみえる。ただ、その一方で「下準備」と表現した点に、「勝負はこれから」と考えているとも感じ取れた。

　その背景には、パートナーとなるリセラーの条件を、従来よりもかなり低く設定したことがあるようだ。リセラーは4区分され、それぞれの階層ごとに日本IBMからの支援内容は異なるが、今回の募集では基本的に販売目標や認定技術者数などの契約条件を一切撤廃した。

　極端にいえば、販売実績ゼロでも支援を受けられ、パートナー向け総合支援制度「PartnerWorld」も使うことができる。リセラーにとっては、売らなくても支援が受けられるわけだから、魅力的だ。

　ただ、日本IBMにすれば、販社が増えても販売台数の増加に直結するとは限らない。新たに獲得したリセラーとのつき合いを深めてどこまで販売に結び付けていくかが勝負。「最低1台でもIAサーバーをどうやって売ってもらうか」が重要なポイントだ。「下準備」と高橋執行役員が表現した理由はここにある。

　日本IBMは、IAサーバー市場においてブレードこそトップシェアを堅持しているものの、ラック型やタワー型では弱かった。とくに台数を稼げるエントリーモデルでは極端に競争力がなかった。調査会社ノークリサーチの調べによると、06年度上半期（4─9月）IAサーバーのシェアは、台数で10・9％、金額で12・9％とともに5位と低迷している。売れ筋のラック型モデルで価格競争力がなかったことに加え、「IBMは価格が高いという印象を持っているSIerが多い」（高橋執行役員）ことも影響している。価格下落が激しく、ハード面での差別化が難しいIAサーバーでは、価格競争力が大きな要素になるため、IBMのシェアは一向に上がらなかった。

　要因はまだある。IAサーバーの提案は、「クライアント端末との連携が大きなポイントになる」（高橋執行役員）のだが、PCをレノボグループに売却したことで「Thinkシリーズ」のブランド力が低下。IAサーバーの販売にも悪影響を与えているというのだ。高橋執行役員が、レノボ・ジャパンの顧問を昨年から兼務しているのは、その問題解決を急いでいるからのように思える。

　新規に獲得した1000社を加えて、日本IBMのリセラー体制は4000社にまで膨れ上がった。この豊富な販売会社とのパイプをどう生かしていくか。リセラー網の拡充という面ではまずは順調に滑り出したが、その販売体制が真価を問われるのはこれからだ。