富士通（黒川博昭社長）と米サン・マイクロシステムズ（ジョナサン・シュワルツ社長兼CEO）の両社は、共同開発した「SPARC Enterprise（スパーク・エンタープライズ）」の拡販に意欲的な姿勢をみせる。同製品を戦略製品と位置づけ、国内外のUNIXサーバー市場で強さを見せつけるIBMやHPの牙城切り崩しを推し進める考えだ。

　両社が共同開発して市場投入した「スパーク・エンタープライズ」は、オープンシステムの優位性とメインフレームクラスの信頼性を併わせもつ点が特徴だ。

　サンのマイクロプロセッサ「SPARC」とUNIX系OS「Solaris10」を搭載。SPARCサーバーのなかでは最高峰の製品に位置づけられる。モデル数は、ハイエンドとミッドレンジ、ローエンドを合わせて6種類を用意した。

　富士通の佐々木一名・プロダクトマーケティング統括部エンタープライズサーバ部長は、「今年度は、既存のUNIXサーバー（プライムパワー）の販売も含めて前年度比7％増の1万7000台を目指す」としている。一方、サンでは具体的な販売台数や売上高を明らかにしていないものの、「売上規模が2ケタ成長することは間違いない」（九里禎久・マーケティング統括本部プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部長）と強調する。

　販売については両社それぞれで対応する。そのため、両社によって拡販する製品や対象企業などが異なってくる。富士通は、「エントリーモデルがウェブなどフロントシステムの需要を獲得し、UNIXサーバー販売目標の9割近くを占めるようになるだろう」（佐々木部長）と分析している。一方、サンでは「“サーバー統合”という点で理想的な製品に仕上げている。ユーザー企業がサーバー統合や仮想化を実現していくためのハードルを引き下げた」（野瀬昭良・プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部主幹部長）としており、メインフレーム需要がオープン化に流れる可能性が高いことを示唆する。

　UNIXサーバー市場でユーザー企業を増やすことが主戦場になるが、両社の戦略には違いがある。

　富士通がUNIXサーバーをバックエンドで活用するユーザー企業に対して、エントリーモデルを提案し囲い込むことで新製品の拡販につなげるのに対して、サンはメインフレーム需要を意識、UNIXサーバーのユーザー企業をメインに新規開拓する計画だ。

　しかし、両社とも「シェアを拡大する」ことを掲げており、IBMやHPなど上位メーカーを攻め落とすことが、共同開発の目的であることに変わりがない。

　それぞれのスパーク・エンタープライズ販売による相乗効果を生かし、スパイラル効果を高めることができるのかどうか。両社の動きは、UNIXサーバー市場のシェア争いに大きな影響をおよぼすことになりそうだ。