ユニシス　グループ連携強化へ

ICT分野でトップシェアを目指す

　日本ユニシス（籾井勝人社長）が子会社を含めたグループ戦略の強化を打ち出した。ユニアデックスとネットマークスの連携強化を図り、ICT（情報コミュニケーション技術）基盤構築ビジネスの拡大に乗り出す。両社で新コンセプトの製品・サービスを提供、ICT市場でトップシェアを目指すとしているが、果たしてSI／NI融合ビジネスを確立できるのか。（佐相彰彦●取材／文）

■子会社の主力事業で融合狙う　新ブランドで売り上げ倍増へ

　ユニアデックスとネットマークスは新ブランド「PowerWorkPlace（パワーワークプレイス）」を掲げ、第一弾として音声とデータを組み合わせた「ユニファイドコミュニケーション」分野の製品・サービスを今年末から提供する。

　製品・サービスとして、連携基盤のウェブサービスを核に、IPネットワーク活用のコミュニケーションツールと業務アプリケーションなどを提供。当面は、シスコシステムズの「Unified CallManager」や「Unified MeetingPlace」「Unified Presence」などのIPテレフォニー製品、マイクロソフトの「SharePoint Server」や「Exchange Server」「Live Communications Server」などを組み合わせる。シスコ製品ベースのネットワーク構築で国内トップのネットマークスと、マイクロソフト製品を中心としたシステム導入で多くの実績を持つユニアデックスという両社のノウハウを生かし、システム構築に加えてコンサルティングから運用までの総合サービスを提供していく方針だ。

　ユニファイドコミュニケーション関連ビジネスとして、現段階では売上高がネットマークスで80億円、ユニアデックスで20億円、合わせて100億円規模という。ユニアデックスの角泰志・常務執行役員は、「今後3年間で、2倍の200億円を見込む」としている。

■第一弾の具現化で新境地開く　NIerの成長路線敷設が急務

　日本ユニシスがネットマークスを傘下に収めてから約3か月。「SIとNIを融合させたビジネスの確立を果たす」（日本ユニシスの籾井社長）ことを狙いとしてNIerを買収したわけだが、これまでグループ全体の相乗効果を発揮させる策を打ち出していなかった。

　9月初旬に開催した会見で籾井社長が冒頭、「グループ全体のビジョンをなかなか打ち出せずに当グループの方向性を伝えられなかったことについては、（顧客企業や取引先などの）気を揉ませたかもしれない」と発言。「しかし、シナジーを見いだすためには、それなりの時間がかかるもの。今回、SIとNIの融合を見据えた第一弾が具現化したことで新境地が開ける。できるだけ早い段階で確立していきたい」考えを示した。さらに、「ユニアデックスとネットマークス、そして当社を含めた協業が今後は増えていく」とした。

　これは、日本ユニシスグループがICT関連の製品・サービスを総合的に提供することを重点戦略として掲げていることによる。日本ユニシスとユニアデックス、ネットマークスの3社で営業力や技術力、顧客基盤などのシナジーを発揮させて収益体制を確立するという。ユニアデックスの角常務執行役員は、「当社とネットマークスによる今回の連携は、サーバーからネットワークまでのフルラインソリューションをワンストップで提供していくための第一弾」という。今後も、グループ3社の協業でSIとNIの融合を進めていき「法人向けICTシステム市場でトップシェアを目指す」としている。

　だが、課題もある。新しくグループ会社になったネットマークスの業績に関してだ。同社の2007年度（08年3月期）第1四半期の連結業績は営業利益がマイナス10億3300万円（前年同期はマイナス14億7500万円）、経常利益がマイナス10億7200万円（同マイナス15億2300万円）、最終利益がマイナス7億8700万円（同マイナス9億2700万円）だった。同社の佐藤宏副社長が「計画通り」とアピールしているように、改善の方向に進みつつある。しかし、赤字であることに変わりはない。それだけでなく、売上高は80億2100万円（前年同期比9.2％減）に減少した。通期の連結業績予想については、営業利益5億円（前年度はマイナス18億5100万円）、経常利益3億円（同マイナス23億2100万円）、最終利益4億円（同マイナス47億6500万円）と黒字転換を果たす見通しだが、売上高が488億円（前年度比5.2％減）と縮小することから、コスト削減による利益の捻出といわざるをえない。

　NIerの収益モデルを見いだすのが難しいといわれているなか、SIとの組み合わせで、いかにネットマークスが売上拡大による利益の確保といった成長路線を描けるかが岐路になりそうだ。また、不適切な取引で過去の決算を大幅に修正したという行為も顧客への信頼性がグループ全体に広がる可能性を秘めており、気になるところだ。

　SI／NI融合ビジネスの確立でICT市場の主導権を握ろうとしている日本ユニシスグループ。これを達成するためには、課題を早急に解決しなければならない。