ディストリ特化を脱却できるか

　コンピュータ製品とネットワーク製品の総合ディストリビュータのなかで、丸紅インフォテックだけがディストリビューションに特化したビジネスモデルから脱却できていない。

　ほかのディストリビュータをみると、各社ともディストリビューションだけでないビジネスモデルを構築しつつある。大塚商会は、システム構築やサービスを提供するSI事業にいち早く着手。CRMとSFAを一体化した情報システム「SPR」の導入も功を奏し、年度ごとに過去最高の業績を更新するほど順調に成長している。ソフトバンクグループは、通信事業者の機能を手に入れたことで、回線を含めた製品販売やサービス提供が可能になった。グループ会社でディストリビューション事業を手がけるソフトバンクBBでは、ソフトフォンとSaaSプラットフォームを組み合わせた販売や、アプリケーションの月額課金サービスなどを拡大できる素地が固まってきているというわけだ。ダイワボウ情報システムは、ネットワーク関連ビジネスが弱いと認識し、大手スイッチメーカーのシスコシステムズと販売契約を結び、子会社のDISソリューションでは、コンピュータシステムとネットワークシステムを融合させたビジネスの拡大を図ろうとしている。

　一方、丸紅インフォテックは2004年にコンピュータウェーブと統合することで、ハードとソフト融合のディストリビュータとして他社に負けない品揃えを有するようになった。統合当初は、「04年度（05年3月期）までに基盤を固め、05年度には統合効果が発揮できる」と、前社長の梅哲雄氏が意気揚々と話していた。だが、05年8月に統合したウェブEDIシステム「ビーコン」にシステム面でトラブルが発生、EDIが機能しない状況が続き、営業面で大きなロスが出るという事態を招いた。05年度は通期連結業績で営業損益、経常損益、最終損益のすべてが赤字に転落。システム障害を克服し、06年度は業績を回復できると見込んだが、パソコンを中心にハードウェアの市場環境が厳しいことから、通期連結業績は最終損益が赤字という結果になった。

　では、このまま業績悪化が続くのだろうか。今年6月末に社長に就任した天野貞夫社長は、「ディストリビュータが儲からない環境になっていることは十分に承知している。しかし、まずは社内体制を整えることが先決だ。適切な人員配置やコスト削減など、改善できるところは改善して利益を確保できるようにする」としている。今年度で「完全に〝ウミ〟を出し切る」という。また、このほど丸紅の100％子会社になることを発表。これは、「丸紅グループの一員になることで、顧客の信用を取り戻す」ためだ。加えて、「グループ経営により、ビジネス領域が広がる可能性が出てくる」とみている。

　新しいビジネスモデルの構築については、「今ある資産を最大限に生かせる事業の強化を進める。現段階では、『ビーコン』を中心としたウェブビジネスと、パソコンなどのリユース・リサイクルサービスの拡充を計画している」という。ただ、「利益を確保できる企業体質に変わらなければ、新しいビジネスモデルを構築しても意味がない」。今年度の基盤固めが重要というわけだ。