ビジネスマッチングは成立しているか

　秋口になると、ビジネスマッチングを目的にしたイベントが各地で精力的に行われている。

　地方での展示会は、地場のITベンダーにとって、地域を盛り上げるために開催されるもので、特にビジネスマッチングの場として、重要な役割を果たしている。展示会は、地方自治体や各地の経済産業局と民間団体が、共同で催しているイベントだ。

　ただ、近年では、地場で展示会を開催してもなかなか集客が見込めないことから、エンドユーザーが集中している東京で展示場を借り、あえて地方発の展示会を開催する動きも出ている。「東京で開催する展示会のほうが情報がたくさん集まっている。他の主要都市、例えば大阪などで展示会をやっていたとしても、自分は東京に行って情報収集をするだろう」と、あるITベンダーの経営者は打ち明けた。

　地方の展示会の苦心ぶりがうかがえる例がある。宮城県情報サービス産業協会（MISA）と日本情報振興協同組合（JIA）東北支部で、従来は「拓け〝e─みやぎ〟FAIR」と「JIAビジネスフェアin東北」の、2つの展示会を同日に開催していたが、昨年から共同開催に変え、「東北ITソリューションEXPO」という名称で展示会を開催している。

　こうした経緯で東北最大級の展示会が誕生し、前年の来場者数の約2000人を倍増させるべく、メディアでの宣伝も行った結果、過去最高の来場者数を記録した。

　同協会が発表した資料によれば、来場者は過去最高ではあったものの、目標として掲げていた前年対比2倍の水準にはいたらず、集客の難しさが浮き彫りになっている。出展社へのアンケート結果では、商談につながったケースは少なかったようだが、参加企業の多くは、需要を掘り起こすための貴重な場と考えているようだ。地場が躍起になっている姿が垣間見える。

　中国圏では広島県情報サービス産業協会が（HIA）が中心となり、「コンピュータ＆ネットワークEXPO」を開催していて、今年で11年目にあたる。中国最大規模の展示会で2万人もの集客があるが、商談の件数はやはり少ないようだ。

　毎年、その時に話題となっている事柄からテーマを決めるなど、運営側では展示会を盛り上げる努力をしているが、「同業社の参加は多いものの、エンドユーザーの参加が少ないように思う。訴求できていない部分があるのだろう。もっとエンドユーザーに参加してもらう機会を増やすため、何らかの啓蒙活動が必要」と関係者は考えている。

　集客という面では、必ずしも出展者が満足のいく結果ではないようだが、北海道では、むしろ展示会の後の懇親会などがビジネスマッチングの場として大きな役割を果たすのだという。

　展示会は民間が中心となって運営に当たっている一方、官は予算は出すものの、運営そのものには消極的な態度がうかがえる。

　地場を盛り上げていくには、官が後援などに名を連ねるだけでなく、運営についても積極的に関与すべきと考える。そして、東京に目が向かいがちなエンドユーザーの参加を促し、ビジネスマッチングの場を盛り上げていく必要がある。