JCSSA米国エグゼクティブ視察団(団長:JCSSA大塚裕司会長)は、カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のIT関連商品販売店を訪問し、最新の販売事情を視察するとともに、ヒューレット・パッカード(HP)において次世代デジタルライフを実現する「スマートホーム」を体験した。(吉若 徹●取材/文)
・(上)から読む家庭に浸透するデジタルライフ
画質向上で薄型テレビの人気衰えず
■薄型テレビ、ひとつください
米国IT関連商品販売店の品揃えの主役は、1990年代に隆盛を誇ったPCから薄型テレビにシフトしている。米国大手家電量販店のベスト・バイをはじめとして、フライズ・エレクトロニクス、サーキット・シティなどIT関連販売店の目玉は大型サイズの薄型テレビである。PC専門店のコンプUSAも例外ではない。どの店舗も薄型テレビのコーナーを広く設け、20インチ前後の液晶タイプから100インチのリアプロジェクションタイプまで数多く品揃えし、迫力のある陳列で来店者にアピールしている。
各店で必ず見かけるのがホームシアターの提案コーナーだ。大画面の薄型テレビに5.1チャンネルのサラウンドシステム、DVDレコーダーを組み合せ、カウチを置いてリビングルームを演出し、ホームシアターの雰囲気を訴求している。どの店も専任の販売員を配置し、お客の対応に万全の態勢をとっている。
展示されている薄型テレビのおおよその販売価格は、サムスン製の52インチ液晶フルハイビジョンテレビが3400ドル、同じくサムスン製の50インチプラズマフルハイビジョンテレビが2800ドルである。

携帯オーディオコーナーは、9月に新製品が発売されたこともあり、iPodが席巻している。ケースなどアクセサリーも数多く陳列され、さらにヒートアップしているもようだ。
薄型テレビ、携帯オーディオのほか、デジタルカメラ、DVDプレーヤー、携帯電話などに各店とも注力しており、デジタル家電が生活に溶け込んでいる様子がうかがえる。米国も日本も販売店の事情は同じだ。
ある店舗を視察している時に、ラテン系のご婦人が「このテレビ、ひとつください」とソニーの32インチ液晶テレビ・ブラビアを980ドルで買って帰った。
どの店舗でも充実しているのがDVDコンテンツである。その陳列の量には圧倒される。音楽CDも含めて旧作から新作まで豊富に展示・販売されている。販売店の多くが郊外型の大型店舗を展開しており、陳列スペースが大きいことも理由のひとつだが、米国ではDVDやCDそのものを目当てに買いにくるお客が多いという。日本の家電量販店ではあまり見かけない光景である。
販売員は「薄型テレビの需要は大型化し、フルハイビジョンテレビに注目が集まっている。昨年のハイビジョンの価格でフルハイビジョンが買えるからだ」と語る。まだまだ薄型テレビの人気は続きそうだ。
■デジタルライフはいかが…
HP訪問時に、同社のブリーフィング・センター敷地内に開設された「スマートホーム」を視察した。
スマートホームは、HPが注力しているデジタルライフを実現させるコンセプトハウスで、玄関、居間、書斎、寝室、キッチンなど家全体がネットワークで接続され、サーバーに格納されたコンテンツやインターネットにいつでも、どこでもアクセスできるようになっている。
このスマートホームは、2006年1月にラスベガスで開催されたコンシューマ・エレクトロニクス・ショウ(CES)で展示された施設をそのままカリフォルニア州クパチーノのHP社内に移設したもので、今年8月から同社の訪問者に公開されている。
居間に置かれたHP製の薄型フルハイビジョンテレビでは、DVD、CD再生だけでなく、映画、音楽のダウンロードも可能で、高画質高音質で楽しめるほか、インターネットも接続可能なホームシアターになっている。
玄関部分に設置されたホームコントローラーはインターホンの役割のほか、各部屋のライトコントロール、ブラインドの開閉コントロール、空調コントロール、屋内のセキュリティ管理機能を持ち、AV機器がコントロールできる。

キッチンに置かれたPCでは、屋内のシステム制御をはじめとして、スケジュール管理、伝言板の役目も担う。
屋内全体のIT機器、家電製品がネットワークで接続され、サーバーで集中管理されている。
HPは北米でコンシューマ市場の開拓に注力しており、スマートホームはデジタルライフの提案を具現化するものである。このモデルハウスで使用されているAV機器およびサーバー機器はHPの製品をベースにスピーカや冷蔵庫、屋内コントローラなど、パートナーのテクノロジーを利用して構成されており、7万ドルで構築できるそうだ。
近い将来、米国の大型家電量販店ではホームシアターの提案からさらに進んで、デジタルホームの提案が出てくるかもしれない。