社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は大塚裕司会長を団長とした「JCSSA米国エグゼクティブ視察団」を組織し、10月15日から6日間の日程で米国主要IT企業および販売店を視察した。(吉若 徹●取材/文)
世界規模でのデジタル化が追い風
シリコンバレー主要IT各社の業績、好調に
総勢20名の視察団が訪問した企業は、カリフォルニア州のインテル、アップル、ヒューレット・パッカード(HP)、グーグル、アドビシステムズ、フォーティネット、ネットスイートの7社。そのほか、カリフォルニア州サンノゼ近郊のコンピュータ販売店を視察した。
■ITビジネスの新しい潮流
カリフォルニア州サニーベルに本社を構えるフォーティネットは、ネットワークセキュリティの機能を1つのサーバーですべて管理する「UTM(統合型脅威管理)アプライアンス」で急成長を遂げている。
セキュリティベンダーのネットスクリーンの創立者で、同社の社長兼CEOを務めたKen・Xie氏が2000年に設立。株式非公開企業だが、主要なベンチャーキャピタルから注目を集める企業となった。
IT関連調査会社のIDCによると、情報セキュリティ市場は、アンチウイルス、ファイヤーウォール、VPNの市場から侵入検知の市場を経て、UTMアプライアンスが急激に伸び、08年には28億ドルの市場になると予想している。そのUTMアプライアンスベンダーのメインプレヤーとみられているのがフォーティネットである。
フォーティネットのUTMアプライアンス「FortiGate」に搭載されているセキュリティ機能は、ファイヤーウォール、VPN、アンチウイルス、不正侵入防御(IPS)、Webフィルタリング、アンチスパム、アンチスパイウェア、帯域制御など、情報セキュリティに必要な機能のほとんどが含まれている。
しかも同社は、自前でOSとASICを開発し、処理の高速化を実現していることが競合ベンダーの追随を許さない強みといえる。同社のKen・XieCEOは、「日本は重要な市場と位置づけている。販売代理店の拡充とともに、市場を拡大していきたい」と語る。
カリフォルニア州サンマテオに本拠を置くネットスイートは、マイクロソフトとオラクルのOBが中心となって98年に設立されたSaaS事業を展開する企業である。

同社はSaaSの展開にあたり、(1)1つのアプリケーションですべてのソリューションに対応する、(2)インターネットを介してサービスを提供する、(3)企業ごとに最適なソリューション環境を構築する、この3つの基本的考えで展開している。
同社のSaaS環境であるNETSUITEには、SUITEFLEXという開発支援体制が整えられており、SuiteScript、SuiteTalk、SuiteBuilderの3つの層で構成されている。Ecommerce、CRM、Accounting、ERPなど企業のITソリューションに必要なアプリケーションを集め、顧客のニーズに応じた最適ソリューションを統合的に顧客に提供できる開発環境となっている。
顧客と継続契約を維持し、事業拡大を支援し、スパイラルアップをもたらすのがSaaS事業の基本。同社は年間契約方式によって事業を展開しており、ソリューションプロバイダ(販売代理店・パートナー・VAR’s)とネットスイートの協業が、顧客のニーズの具現化、最適環境構築の実現、収益向上をもたらすとしている。
今後、ネットスイートは米国ばかりでなく、日本も含めた全世界でソリューションプロバイダとの協業を強化していく予定である。
フォーティネットとネットスイートのビジネスモデルは、米国のITビジネスが新しい段階に入ったことを示唆している。
ベンダーから顧客へのアプリケーションの直接提供から、アプリケーションを1か所に集めて使いやすい環境を整備し、顧客には運用ソリューションを提供するという方法だ。両社のビジネス展開は、ITビジネスの新しい潮流といえる。
■業績好調な主要ITメーカー
今回訪問したパソコン産業の黎明期から活躍するインテル、アップル、アドビシステムズ、HPは世界規模でのデジタル化の追い風を受けて元気である。
先頃発表されたインテルの7-9月の決算によると、MPUの出荷数量が過去最高になり、売上高は前年同期比15%増の100.9億ドル、利益は前年同期比43%増の18.6億ドルだった。
アップルも7-9月は、パソコンの販売台数が過去最高を更新し、売上高は前年同期比29%増の62.2億ドル、利益は67%増の18.6億ドルだった。大ヒット商品のiPodは発売以来、1億台を超えているという。
アドビシステムズは、6-8月の第3四半期で売上高が前年比41%増の8.5億ドルで過去最高を記録し、利益は57%増の2.69億ドルとなった。マクロメディア買収による売り上げ増、アクロバット、クリエイティブ・スイートの新製品投入が好調の要因だ。
10月末日に年度決算を迎えるHPは、07年度通期の売上高を前期比12%増の1030億-1032億ドルになると予測している。
ネット検索大手のグーグルの7-9月も好調だ。売上高は前年同期比57%増の42.3億ドル、利益は46%増の10.7億ドルだった。
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