NECがパートナーに加わる

　リッチクライアントソフト「Curl」を開発するカール（井藤登社長）が販売本数を伸ばしている。既存のクライアント／サーバー（C／S）型アプリケーションをウェブ化する自動変換ツールを開発したことで、これまで課題だったコストを大幅に軽減。顧客の評価を得て販売に弾みをつけた。今年5月に入ってからは新しくNECが販売パートナーに加わるなど販路が拡大。向こう3年でCurlライセンスの売り上げを今期（2009年3月期）見通しの約4倍、20億円に増やす。

　従来タイプのC／S型アプリケーションは維持コストがかさみ、かつシステムの柔軟な変更が難しいことなどから、近年ではサーバーベースのクライアントシステムへの置き換えが急速に進んでいる。ウェブ化もその一手段であり、Curlはウェブに対応したクライアントソフトの開発・実行基盤として、これまで国内の大企業を中心におよそ350社へ納入した実績を持つ。独自のプログラミング言語体系を持ち、C／S型と同様の高い画面操作性を誇ることからウェブ方式のリッチクライアントソフトとして定評がある。

　しかし、既存のC／S型アプリをCurl対応させるには、初期の開発コストがかさむのが大きな課題になっていた。ウェブをベースにしているとはいえ、Curl独自の開発体系がコスト上昇の1要因になっている。

　そこで打ち出したのが、C／S型アプリで多用されてきたプログラミング言語のVisual Basic（VB）をCurl言語に自動変換するツールで、昨年11月末に投入したものだ。顧客企業やSIパートナーからの評判は上々で、かねてからの課題だった開発期間やコストの大幅軽減に道筋をつけた。自動変換の精度は操作画面まわりでほぼ100％、アプリの中身に相当するロジックの部分で60－90％に達する。

　自動変換できなかった部分はSIパートナーなどがプログラムを書き足すことで対応する。頻繁に不足する部分については、SIパートナー同士のコミュニティで、プログラムが格納されたライブラリを相互に補うケースも増えている。

　こうした「開発コストの削減や作業負担の軽減に努める」（井藤社長）仕組みづくりが評価され、SIパートナーも順調に拡大。今年5月にはNECがSIパートナーに参加。カールの親会社である住商情報システムとの協業も含めてCurlのビジネスを拡大させる意向を示す。

　サーバーベースのクライアントコンピューティングを巡っては、仮想マシンやブレードPCなど異なる方式の機能強化も相次ぐ。顧客企業の選択肢は広がっており、必ずしもCurlをはじめとするウェブ化だけが解決方法ではなくなっているのも事実。また、ウェブ方式だけを限ってもライバル他社とのシェア争いは激しさを増す。

　Curlは初期開発コストを大幅に削減する一方、クライアントパソコンの処理能力を活用することで、サーバー側の負荷を大幅に軽減するなどのCurlならではの特長を前面に出すことで競争に打ち勝つ。北米地区での営業も強化しており、グローバル規模での拡販を目指す。SIパートナーも引き続き増やしていく方針。

　今年度（09年3月期）のCurlライセンスの国内売上高は前年度比1.5倍余りの5億円を見込む。持ち前の強みを発揮することで向こう3年で同20億円に拡大させる計画だ。