根付くか!? ナレッジマネジメント
企業の社員一人ひとりの知識や経験を共有し、組織全体としての業務効率の向上や高い業績目標の達成を目指す考え方として「ナレッジマネジメント」がある。知識や経験を共有する仕組みとして、一般的には社内データベースなどの活用で実施。日本では1990年代後半から本格的に取り組み始めた企業が多かった。残念ながら、成功したケースは少ない。だが、最近になって再びクローズアップされてきている感がある。ナレッジマネジメントをビジネスとして手がけるベンダーが事業拡大に力を入れ始めている状況だ。
「人中心のナレッジマネジメント」を謳い、ソフトウェアやコンサルティングサービスを提供するリアルコムは、このほど「REALCOM AskMe Enterprise 8.5日本語版」を発売した。同製品は、プロフィール情報から社員の専門性をあぶり出して“見える化”できる。社員の行動で専門性を自動的に更新するほか、コミュニティページの投稿コンテンツを投稿者のプロフィール情報と紐付ける機能も持つ。社員の能力を浮き彫りにすることで、今までなかった社員間のコラボレーションを可能にすることが売りだ。谷本肇社長は、「社員が自分らしく仕事できる環境が成長に導くカギになることを、ユーザー企業に訴えるためにこの製品を市場投入した」としている。
日立コンサルティングでは、コンサルティング会社の立場からナレッジマネジメントの重要性に着目し、「ナレッジパートナーサービス」を提供。同サービスは、ナレッジマネジメントに関する課題解決をサポートするもので、ユーザー企業の状況に合わせてプランニングする。基本方針の策定からナレッジ流通の分析、構想策定、計画設計などを組み合わせ、システム開発を含めて1年間程度でユーザー企業がナレッジマネジメントを習得できるという。吉岡正壱郎ディレクターは、「10社ほどと話を進めている」と引き合いがあることに自信をみせている。
ここにきてナレッジマネジメントが再認識され始めたのは、次世代ウェブを軸にして企業がナレッジマネジメントを導入しやすい環境になりつつあるからとの見方が強い。これまでは、グループウェアなど情報共有ベースのシステムを導入したユーザー企業が複数の問題を抱えるケースが多かった。「作ったシステムが使われない」「システムの維持管理が難しい」「使える情報が見つからない」などが浸透しなかった根本的な理由である。しかし、最近はSNSやブログ、マッシュアップなどがコンシューマの間で広まり、こうしたサービスが法人でも業務活用できるといわれている。コミュニケーションや情報収集を活発化する機能があるため、企業が取り入れるというのがナレッジマネジメントを提供するベンダーの考えである。
現段階では、多くの拠点を持つ大企業を中心にナレッジマネジメントが受け入れられている。「ナレッジマネジメントは企業内だけでなく、企業間でも十分に活用できる。そういった点でSMB(中堅・中小企業)の連携で採用が進む可能性がある」(リアルコムの谷本社長)。将来的には、SMB複数社のシステム案件獲得などにナレッジマネジメントが役割を果たす可能性も秘めている。(佐相彰彦●取材/文)