大塚商会のソフトウェア子会社、OSK(宇佐美愼治社長)と日本IBM(大歳卓麻会長兼社長)の共同作業が本格的に始まる。中堅・中小企業(SMB)向け基幹システムでトップシェアのOSK主力製品「SMILEシリーズ」にIBMのデータベース「DB2」を搭載することとなったのだ。マイクロソフトに傾注していたOSKはIBM系列を介した「新商流」を生みだす。国内にDB2搭載のSMB向けERPが少ないなか、今回の連携は日本IBMにとって創業以来の「悲願」。マイクロソフトベースで基幹システムを開発する競合ベンダーに影響を及ぼしそうだ。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
SMILEが「DB2」に対応
10月21日に都内で開いた記者会見でOSKの田中努専務は「今回、晴れて追加のデータベース(DB)を発表できる」と、1年前に公表した複数メーカーDB対応策「マルチDB化戦略」がようやく実を結んだことをアピールした。
同社の主力基幹システム「SMILEシリーズ」はこれまで、マイクロソフトベースを主に開発してきた。今回、3階層に分かれる同シリーズのなかで、中間に位置する年商10-500億円のSMB向け新版ERP「SMILE BS」をまず「DB2」対応させる。また、他の階層の同シリーズも近く「DB2」対応にすることを公表した。田中専務は、長く支援を受けてきたマイクロソフトを気遣うコメントを織り交ぜながらも「販売領域の拡大が目的」として、これまで販路でなかったIBMのオフコン「AS/400」(現eServer iSeries)などが入っている企業へ同シリーズが浸透することを期待する。
これに呼応して、日本IBMの小原琢哉・執行役員は「念願の日を迎えた」と、「SMILE BS」の拡販に全力を傾けることを宣言。早速、東京・箱崎の事業所内に専任人員3人を配置した「SMILE BS案件ご支援センター」を設置し、同社のビジネス・パートナー(BP)が展開するセールスを全面バックアップする体制を敷く。同センターでは、日本IBMのBP部隊などが利用する「ディールハブ」と呼ぶ営業支援システムを外部に提供。迅速に案件を獲得するために「サーバー構成作成」「見積り作成」など、手間がかかる作業を支援する。
IBM製品と「SMILE BS」などを組み合わせて販売するのは当初、大塚商会や同社とプリンタ販売で提携関係にあるリコー販売、IBMのBPなどで行う。特にリコー販売とは「案件を共有する」(小原執行役員)考えだ。また、「一刻も早く、実績を作りたい」(同)と、「ディールハブ」をこれ以外のパートナーにも順次開放する予定である。
 | OSKと日本IBM 新販路開拓に 光明もたらすか |
今回、日本IBMのソフトウェア部隊では、OSKの「SMILEシリーズ」の「DB2」対応に漕ぎ着けるまでに5年以上の歳月を要した。 OSKにとっては、これまで全面バックアップしてもらってきたマイクロソフトへの「背信」ともとられかねず、「販売領域の拡大」(田中努専務)といえども、すぐに「DB2」対応に踏み切れない事情があった。 「SMILE BS」の「DB2版」はまず、OSKの親会社である大塚商会や同社と提携関係にある首都圏を営業エリアにもつリコー販売から販売される。同「DB2版」は今後、日本IBMの有力販社からも拡販されるだろう。現在、日本IBMの付加価値ディストリビュータ(VAD)であるイグアスと日本情報通信(NI+C)の2社は、「SMILEシリーズ」以外の有力ERPを担いでいる。 日本IBMの小原琢哉・執行役員は「SMILEシリーズと連携でき、選択肢が増える」と、VAD2社やその2次販社などへも「SMILEシリーズ」の販路を築くことを匂わす。 さらに同社は、トップブランドの「SMILE」の看板を借り、IBM製品と一緒に販売できる新たなパートナーの獲得も目指す。新たな販路開拓を模索していたOSKとSMB市場への進出に苦労する日本IBMの両社に光明をもたらすものになりそうだ。 |