「IOD」の普及はいかに!?

ソフトやコンサルなど全方位で提供

　米IBMは、米国・ラスベガスで開催した年次カンファレンス「IBM Information On Demand（IOD）2008」でインフォメーション・マネジメント分野で優位に立っていることをアピールした。同社のソフトウェアをはじめコンサルティングやサポートなどを組み合わせることで、ユーザー企業に対してビジネス最適化を具現化する“IODソリューション”を提供。はたして、「IOD」は普及していくのか。（佐相彰彦●取材／文）

■05年にIODを打ち出す　07年に本格的な展開

　米IBMがIODを打ち出したのは2005年。ソフトウェアグループのエグゼクティブであるスティーブ・ミルズ・バイスプレジデントは、「いかに社内データを成長のために活用できるかを考えなければならないと判断した」という。以降、同社はインフォメーション・マネジメント事業の拡大に向けて、新製品の開発や適切なベンダーの買収に乗り出した。ビジネス面では07年から本格始動。最近の出来事では、BI（ビジネス・インテリジェンス）ベンダーであるコグノスの買収が記憶に新しい。これにより、データベースをはじめとしたコンピュータインフラからアプリケーションまで一気通貫でつなげることを可能とした。

　同社が提供しようとしているIODとは、ユーザー企業が社内のデータを生かして付加価値サービスを提供できるようにすることだ。このことをインフォメーション・マネジメント・ソフトウェアを担当するアンブシュ・ゴヤール・ゼネラルマネージャーは、「ビジネス最適化を実現する」と表現する。企業内には多くのデジタルデータが存在する。それを、業績アップのために活用できるのがIBMのソフトウェアやサービスだと強調した。インフォメーション・マネジメント分野に関するソフトウェアは1500種類以上。例えばサービスでは、ユーザー企業が戦略策定が行えるシナリオとして「インフォメーション・アジェンダ」をこのほど発表しており、このシナリオをもとにコンサルティングを含めて“上流工程”から提供していくという。

　企業を取り巻く環境は、ビジネスモデルの改善を迫られるなど進化しなければならない状況下にある。ビジネスの変革を行ううえでIT化を図った際、コストがかかる状況は常につきまとっており、優秀な人材確保や有益な情報収集などを行わなければならない。一方、企業業績の不振などでコストを削減しなければならない際は人件費の削減を行う傾向が強く、絶対的な人材不足状況では成長が難しくなる危険性が高い。そのようなケースでは、信頼できる情報に基づいて経営戦略を立て、ユーザー企業のニーズに最適な製品・サービスの提供などを行って業績不振を打破することで成長に導かなければならない。

　ところが、「多くの企業は間違った情報で意思決定を下している」。こう指摘するのは、情報統合ソフトウェア「InfoSphere（インフォスフィア）」のビジネスを担当するジム・ウェルチ・バイスプレジデントだ。「当社が持つ豊富な製品群ならば、顧客は自由に選ぶことが可能であるため、情報統合による成長を見据えた場合、大きなメリットとなる」とアピール。正しい意思決定が可能な環境を作るために、IODを導入する必要性を説いている。また、このような環境を作ることで、「BI（ビジネスインテリジェンス）やデータウェアハウス、MDM（メタデータマネジメント）、ETL（データの抽出・変換・ロードの一連処理）などの分野でもInfoSphereブランドで多くの製品を取り揃えている。しかも、各分野でトップレベルの製品だ」と、ウェルチ・バイスプレジデントは自信をみせている。

■業績は20％増と成果あり　日本市場が拡大のカギ

　では、IODの提唱が米IBMのビジネス面で実際に成果が出ているのだろうか。ゴヤール・ゼネラルマネージャーは、「20％以上の成長率を達成している」と自信をみせている。IODビジネスで新規に開拓した顧客については1万社以上を記録。新しいビジネスパートナーの獲得では2000社に達したという。欧州を中心に、しかも大企業を対象として業績を伸ばしてきたというわけだ。

　事業をさらに拡大していくポイントは何か。ゴヤール・ゼネラルマネージャーは、地域としては「日本市場でのポテンシャルが高いだろう」と分析する。というのも、日本ではコンシューマ向けであれ、法人向けであれ、他の国より充実したサポートが必要となるからだ。各クライアントが蓄積したデータを生かして、いかにサービスにつなげられるかが重要だと同社ではみているのだ。「コールセンターに問い合わせがきた場合、いかに迅速に対応できるかが重要。また、保険会社では訪問先で顧客に適した多くのプランを提案しなければならない」と、その例を挙げている。また、SMB（中堅・中小企業）が多いことも日本でビジネスが拡大する要素という。現段階では、顧客として大企業が中心だが「新製品を開発することも含め、SMBにIODを普及させる」と意欲を燃やしている。

　既存のデータを成長につなげるための情報として活用することは、IBMのコンセプトでは、SMBで当たり前に導入するようになった時点で浸透したことになる。そのカギの一つが日本市場ということだ。