SIerのなかでも営業力に長け、PCやサーバー、周辺機器のハード販売を得意とする販売系SIer。2009年の空模様は08年に続いてはっきりしない。ここ数年、ハードは売価も利益率も著しく低下している。それは09年も変わらなそう。ただ、その一方で好材料もある。ハード販売脱却を標榜し、継続強化してきたサービス事業が実を結び始めている。景気後退の影響は他のIT業種同様に例外なく押し寄せ、ハード販売にもマイナスに働くが、そのなかで明暗を分けるのはサービスだ。(木村剛士●取材/文)
販売系SIer 曇り
サービスへの注力顕著に ハード販売はさらに厳しく
販売系SIerとは、SIerのなかでもハード販売額が大きいSIerを指す。開発力を強みにする開発系SIerに比べて営業担当者を多く抱え、営業力が強いのも特徴だ。そんな販売系SIerは、ハード事業で苦しみ続けている。
単価下落、台数頭打ち サーバーのなかでも唯一の成長分野、IAサーバーはここ数年ユーザー企業のオープン化志向に支えられ台数こそ伸びてきたものの、価格は緩やかな下降線をたどっている。加えて、最近は低価格のIAサーバーの処理性能が向上し、中堅・上位機種が売れにくい環境にもなっている。
ハード事業に追い討ちをかけるマイナス要因は、それだけではない。台数の成長が止まりそうなのだ。IT調査会社のノークリサーチが2008年12月中旬に発表したデータでは、今年度(08年4月~09年3月)のPC(IA)サーバー出荷台数は、ITバブルが崩壊した02年度以来のマイナス成長になると予測。同社の出荷台数データでは、上期は前年同期比1万1200台増の26万7900台、下期予測は同1万2730台減の28万900台。結果、通期では1530台減少の54万8800台とみている。
世界同時不況の影響で日本のユーザー企業も新規IT投資を抑制し、買い替え時期も先送りに。さらに、IT運用コスト削減のためのサーバー統合や仮想化といった、物理サーバーを削減できる旬の技術の台頭も追い討ちをかける。ハード事業が売上高と利益を伸ばす可能性は、従来以上に低くなりつつある。
業績拡大のカギを握るのは、やはりサービス事業だ。独自性を出せて付加価値も高いサービス事業は今後のけん引役を担う。
ハードから脱却、サービス強化 日本IBMの有力パートナー、JBCCホールディングスは自社プロダクト・ソリューション強化のため、新たに新会社「JBアドバンスト・テクノロジー」を設立。自社商品の創出に向け本腰を入れて取り組み始めた。直近公表の四半期業績、今年度(09年3月期)第2四半期の売上高は、ハードを中心としたプロダクト販売が低迷したもののソリューションとサービス事業が拡大。ハード事業のマイナスをカバーした。また、情報システムの運用・保守を一括して請け負うアウトソーシングサービスも強化するつもりで、「現在の50億円から80億円まで積み増す」(石黒和義社長)計画だ。
富士通ビジネスシステム(FJB)は、自社パッケージソフト「WebASシリーズ」とサービス「ITMS」がともに成長。今年上期、「WebASシリーズ」は前年同期比72.1%増、サービスは26.9%増となった。成長をけん引する事業に育ちつつある。

NECネクサソリューションズ(NECネクサ)は、潜在していた強みを全面的にアピールする新サービスを始めた。同社はERPの導入・運用ノウハウが武器で、しかも複数のERP製品を柔軟に取り揃える。NEC製はもちろん、「SAPジャパンやインフォベックなどの製品販売も国内トップクラス」(渕上岩雄社長)だ。08年12月に始めたサービスは、ユーザーの要望や業務課題を抽出し、ERP製品の選定まで行うもの。多種多様なERPを導入できる自社の強みを前面PRして、ERP開発案件に結び付けようとしている。
日本事務器(NJC)もサービス事業強化を表明している。とくにSaaS型サービスの強化に力を注ぐ計画だ。子会社にSaaS型サービス提供と運用サービスのNJCネットコミュニケーションズを持ち、すでに単月黒字化。同社と連携して「09年はSaaS型サービス拡大に本腰を入れて取り組み始める」(田中啓一社長)。
各社各様だが、ハード事業からの脱却、サービス強化に向けて手を打ち始めており、徐々にその成果が現れ始めている。ハード事業のマイナス分をサービス事業でどの程度補えるかが、やはり明暗を分けることになりそうだ。