富士通(野副州旦社長)は4月1日、富士通シーメンス・コンピューターズ(FSC)を完全子会社化、富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)に社名を変更した。FTSはIAサーバーの開発を一手に引き受ける重要な子会社だ。野副社長は挑戦的な数値目標を明示。「開発会社を海外に集約して、国内施策は大丈夫なのか?」という懸念の声も聞こえるが、すでに商流改革に動いている。
「4月1日からすぐに新体制で動けるよう、しっかりと準備する」。昨年末に本紙のインタビューに応じた野副社長は、FSCの完全子会社化についてこう答えていた。シーメンスとの共同経営だったFSCを、完全に経営権を握れるFTSに生まれ変わらせたことは、世界展開の加速とサーバー事業再生に重点を置く野副社長が念願としていた体制変更だった。FTSにIAサーバーの開発業務を一本化することで、調達窓口統一によるコスト削減や、FSCと富士通がそれぞれ行っていた製品評価などの重複業務を排除することで、価格競争力の強化と、開発スピードの向上効果を見込んでいる。
3月30日に開いた記者会見では、サーバー事業の2010年までの目標数値を明確に示した。世界全体では08年の出荷台数27万台、シェア4%(4位)を50万台で10%以上に伸ばす。国内市場では08年の出荷台数8万台、シェア14%(4位)を、20万台・30%に伸ばすという挑戦的な目標だ。とくに国内市場については、新興国に比べて成長力が弱いにもかかわらずかなり強気で、順位を4位から1位に引き上げるというのだ。
そんな目標とは裏腹に、国内の富士通販社からは「海外市場にばかり目を向けて、国内施策が手薄になるのではないか」と懸念する声が聞こえてくる。しかし、「万全の準備をする」と本紙のインタビューに答えた野副社長は、早くから組織体制の変更に動いていた。
まず、これまで分散していたIAサーバー事業部隊を集め、「IAサーバー事業本部」を組織した。そのうえで、国内の販売推進部門とパートナー営業、技術支援の3部門を、700人体制の1グループに集約。このグループの責任者に松原信・経営執行役常務を就けて、国内IAサーバー事業の全責任を持たせた。営業面では、直販営業部門にIAサーバーを中心としたプラットフォーム関連製品を売る専任者を置き、パートナー営業では新規パートナーと2次代理店の新規開拓部隊を用意した。
松原経営執行役常務は、「SIerや事務機ディーラー、地域販社など、販社を五つに分けてそれぞれに合致した支援内容を用意するつもりだ。インセンティブ(販売奨励金)の見直しなど、パートナープログラムも変更・強化する」と語っている。すでに数社のパートナーには具体的内容が告知されているようだが、4月中旬に開くパートナー向けイベントで、新支援施策を披露する予定だ。
今回富士通がぶち上げた数字はかなり挑戦的。ライバルメーカーに様子を尋ねると、「エールを送りたい」と、聞きようによっては「不可能だ」と言わんばかりだ。体制は整った。ただ、それが機能するか否かはこれから。シェアアップには出荷台数を稼ぐ必要がある。となると、やはり販社の力が必須。「どのメーカーも中身はほぼ一緒」のIAサーバーで、販社が富士通を選ぶメリットを用意できるかどうかがカギを握る。(木村剛士)