SI新会社で足がかりつかむ

リコー(近藤史朗社長)は7月1日、SI(システム構築)の新会社「リコーITソリューションズ」を設立する。2005年1月にグループ内のソフトウェア会社5社を統合して誕生したリコーソフトウェアを母体に、国内販社や保守会社などのSE(システムエンジニア)人員を新会社に集約。ドキュメント機器を中心にしたソリューション事業を中堅・大企業向けに展開する。「ニハチの理論」が現実味を帯びるプリンタ市場。機器販売中心からのシフトがいよいよ本格化する。
2007年12月に週刊BCNの取材に応じた近藤社長はこうつぶやいた。「2割の顧客が8割の出力をする『ニハチの理論』がまかり通る時代になった」。プリンタ業界ではここ数年、年々縮小する市場に向け低価格競争を続けてきた。だが、「他のメーカーは安売りしすぎだ」(同)と、量が捌けたとしても、機器販売では高収益を上げられないと業界全体に警告を発していた。安売りして機器をばらまいたところで、出力実績やサプライ品で収益をつかむビジネスモデルのメーカー側には、得るモノが少ないという。
しかし、低価格競争は止む気配が見られない。リコーはだいぶ以前から、「顧客の価値基準」が機器所有から役務をアウトプットすることへ変化すると分析していた。今回のSI新会社設立は、ソリューションへシフトするための仕上げの段階に入ったことを印象づける。
新会社は、リコーソフト、国内のグループ販社(リコー北海道、リコー販売、リコー関西)、リコーテクノシステムズ(RTS)、本社販売事業本部のSEを集約し約1500人の規模になる。リコーソフトのリコー機器向け組み込みソフトやパッケージソフト、自社プリンタ、これまでRTSなどで扱っていた協力ベンダーの製品やソリューションを「融合」させ、顧客の「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」を支援するという。

新会社がこれから担うと考えられるITサービスの領域は、リコーグループ全体で現在国内売上高が800億円とみられている。全売上高(09年3月期/1兆160億円)に占める割合は10%に満たないが、近藤社長は「着実に成長できる領域」と狙いを定めていた。プリンタ業界で競合のキヤノンがアルゴ21を買収するなどで設立したキヤノンITソリューションズは、達成年度を示していないが3000億円を目標にし、現在の売上高が850~900億円。リコーの新会社は当面、この数字を目指すことになりそうだ。(谷畑良胤)