テラスカイやトライコーンなど国内の有力SaaSベンダーらは5月26日、セールスフォース・ドットコムのベンダー団体「AppExchange Consortium(アップエクスチェンジコンソーシアム)」を設立した。話題先行の国内SaaSビジネスを“本当に売れる”ソリューションに仕立て、市場の活性化を狙う。SaaSベンダーの多くは、個々に事業を展開しているものの、そこに潜む課題解決が先送りになっている。そこで、セールスフォース製品上で事業を行うベンダー同士の連携が不可欠と判断。横のつながりを強固にして、SaaS普及を加速させることを目指す。
集え!「AppExchange」ベンダー東京都のNPO法人として発足

同コンソーシアムは、開発者が作成したアプリケーションを公開し、ユーザー企業がそれを利用できるセールスフォース・ドットコムのマーケットプレイス「AppExchange」上でビジネス展開する事業者であるSaaSベンダーらで構成されている。会員情報や収支報告などを厳格に管理するため、東京都からNPO(民間非営利団体)の認可を受け発足した。
代表者である理事長にはSaaS/ASPサービスを提供するトライコーンの花戸俊介社長CEOが、副理事長にSaaS連携基盤サービス「SkyOnDemand(スカイオンデマンド)」を提供するテラスカイの佐藤秀哉社長が、それぞれ着任した。発足時の幹事会社は、この2社のほかにウイングアークテクノロジーズ、日本オプロ、シャノンの計5社で構成されている。
同コンソーシアムの会員属性は三つ。「AppExchange」を利用したSaaSアプリケーションをすでに保有するベンダーの「正会員」、開発を検討中しているベンダーの「準会員」、セールスフォースの販売会社として提案・販売を行っているベンダーの「協賛会員」で構成・運営する。花戸理事長は、同コンソーシアム立ち上げの理由をこう説明する。「ユーザー企業は、『AppExchange』上のどのアプリケーションをチョイスすべきか分からない。幹事会社を中心とするSaaSベンダーが中心になり、横のつながりをもって有用性をアピールし、ユーザー企業に最適なソリューションを提供していく」。
今後の活動としては、技術研究施策とマーケティング施策に分けて展開する。前者では四半期に1回、「最新技術/事例勉強会」としてコンソーシアム主催で、セールスフォースの技術担当者を招き「AppExchange」開発に有益な技術研究を実施するほか、「意見交換会」で各会員が得た市場の声を討議する。佐藤副理事長は「このような団体がないと、SaaS導入の事例は集まりにくい。成功、失敗の両事例を参考に、検証しながら新たなソリューションを考える」と、SaaSベンダーが一堂に会することの意義を説明する。
NPO法人発足以降、初の「最新技術/事例勉強会」は、6月中にトライコーンを会場に開催する予定だ。
ユーザー向けにイベント開催へ
一方、マーケティング施策としては四半期に1回、コンソーシアム主催イベントを開催する計画だ。セールスフォース製品の導入を検討するユーザー企業向けに、第三者的な位置づけである同コンソーシアムが他社の導入事例を紹介し、アプリ選定を支援する。また、同イベントには「AppExchange」上でビジネス展開を検討するベンダーに対する啓発的な内容も提供し、ベンダー増加を目指す。
第1回の同イベントは7月23日、ウイングアークの社屋を会場に開催する。同コンソーシアムは、広くプロモーションするためにWebサイト(
http://app-c.com/)を開設。イベント告知や会員ベンダーの導入事例、各イベントのプレゼンテーション資料などを掲載する。
国内のSaaS団体としては、SOABEX研究会や「ASP・SaaSインダストリー・コンソーシアム(ASPIC)」、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)が任意で設立した「SaaS研究会」、自社アプリケーションをSaaSで提供することを一つの目的としている「メイドイン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)」などが国内に存在する。ただ、SaaSを“売る”ための研究団体というよりは、啓発・啓蒙団体という位置づけで、各団体の活動が直接的にSaaS普及につながっていない。花戸理事長は「SaaSベンダー間のつながりが薄い。各ベンダーで抱えている技術的な課題は意外と共通しているので、これを解決に導く」と、本気でSaaSを“売る”団体であることを訴える。
同コンソーシアムは今後、セールスフォースが抱えるユーザー企業や販売会社と密接に連携していく方針だ。「AppExchange」を中核にして、ユーザー企業の既存資産である現アプリケーションと連携した「マッシュアップ」を実現するのが同コンソーシアムの役割の一つ。SaaSを“売る”ことを阻んでいた諸課題を解決に導く団体が誕生した意義は大きい。