NTTデータと野村総合研究所(NRI)の2009年度上期(4~9月期)業績は、猛烈な逆風を力業でかわしたという印象だ。両社ともに営業利益こそ減ったものの、連結売上高はNTTデータが前年同期比3.8%増、NRIが1.0%増と健闘。中堅・中小SIerが苦戦するなか、大手SIerは規模のメリットでマイナス要因を吸収した。NTTデータは大型のM&Aでトップラインを押し上げると同時に、海外開発体制の強化でコスト構造の見直しを急ピッチで進める。
リーマン・ショック前の受注残が途切れ始める今年度上期が正念場——。情報サービス業界には上期に本格的な“ショック”が襲来すると懸念されていた。中堅・中小SIerは減収減益が相次ぎ、大手SIerも「無傷では済まない」(SIer幹部)と囁かれていたが、NTTデータとNRIは“底力”を見せた。とくにNRIは、証券業界の“直下型地震”の直撃を受けたにもかかわらず、上期連結営業利益は前年同期比6.9%減に押さえ込んだ。
NRIの上期連結売上高構成比の4割近くを占める証券業界向けの売り上げは同7.5%減だったが、かんぽ生命保険など大手優良顧客のシステム投資を受注するなど保険業で同29.3%伸ばした。しかし、NRIが得意とする上流コンサルティングは不振で、上期は若干の赤字。経営環境が厳しい時こそ、「経営コンサルの需要が増えると思っていたのに、おかしい」(藤沼彰久会長兼社長)と、首をかしげる。コンサルを通じて超上流から案件に入り込み、付加価値の高いSI・アウトソーシングにつなげるのがNRIの手法。下期に向けて受注環境の見通しは厳しく、まだ予断を許さない状況だ。
NTTデータの上期連結売上高は増収だったが、単体ベースで見ると約1.2%の減収。連結ベースでは国内外で積極的に展開してきた連結子会社の拡大(M&A)による増収効果が効いたものの、単体では厳しい受注環境を反映した結果になった。顧客企業からの値下げ要求の圧力は依然として強いが、「当社のコスト構造そのものを見直す絶好のチャンス」(山下徹社長)とプラス思考で捉え、原価低減に向けた施策を加速させる。
具体的には、2011年までに中国の開発人員を今の約1000人から2000人へ倍増させる。この9月には中国有力ソフト開発と合弁で保険会社向けシステム開発会社を立ち上げるなど、急ピッチで拠点拡充に取り組む。今後は「インドの開発体制を拡充するかどうか検討」(榎本隆副社長)する。IBMなど欧米有力SIerはインドで数万人規模の開発体制を築いており、NTTデータ規模のSIerなら少なくとも5000~1万人規模がインドで必要になるという見方がある。
NTTデータ、NRIともに不況下でもトップラインを伸ばす姿勢を崩しておらず、規模のパワーを武器に勝ち残りを目指す。(安藤章司)