企業のITシステムは、システムのオープン化やマルチベンダー化が進み、より大規模になってきた。だが、その一方で管理が複雑・多様化してきている。運用管理コストが増大するなか、システムの運用を自動化することで常時監視し、効率的な運用や迅速な障害対応による安定稼働を支援する運用管理ソフトウェアのニーズが高まっている。
運用管理製品、市場で高い伸び
大規模ではパフォーマンス管理需要  |
IDC Japan 入谷光浩アナリスト |
IDC Japanの調査によれば、08年の国内ソフトウェア全体の市場規模は2兆円超。そのなかで、運用管理ソフトウェアの市場規模は2774億円、2013年までの平均成長率は年率約5%にのぼると予測されている。IDC Japanのソフトウェアマーケットアナリスト・入谷光浩氏は「運用管理は、はやりすたりがなく、常にニーズがあるため、投資の削減対象にならない製品」とみる。
運用管理製品を機能別にみると、06年までは「統合管理ツール」のようにシステム全体のイベントの集中監視や自動対応を行う「イベントオートメーション」や定型業務、バッチ処理をスケジュールで実行する「ジョブスケジューリング」などの需要が旺盛だったという。07年からは障害への対応としてシステムの性能情報を収集し、稼働状況を監視・分析・レビューする「パフォーマンス管理」の成長率が高くなった。ITサービス品質の指標をもとに段階的に改善していく「サービス・レベル管理」やシステムリソースの処理能力などを見積もり、システム構成を最適化する「キャパシティ・プランニング」などが含まれる。また内部統制、コンプライアンス(法令順守)の観点から、ソフトウェアの配布やハード・ソフトの資産管理、構成管理、ライセンス管理、システム変更を計画/追跡/適用するツールといった「変更/構成管理」に対するニーズが伸びていると、入谷氏は話す。
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富士通 堀江隆一担当部長 |
日本国内の統合運用管理製品のシェアは、日立製作所の「JP1」と富士通の「Systemwalker」が二分している。富士通は「リーマン・ショックで若干苦しんだが、トータルでは前年を上回る売れ行き」(ソフトウェア計画本部 ミドルウェア事業統括部の堀江隆一担当部長)という。統合管理製品「Systemwalker Centric Manager」を早い段階から市場に投入し、システムやネットワークの集中監視部分で強みをもっている。最近は、システムの性能情報の監視・分析を行い、ITシステムのサービス品質の最適化を支援する「Systemwalker Service Quality Coordinator」をはじめとした、サービス管理製品群について注目が高まっているという。
また、統合運用管理製品「WebSAM」を販売するNECはサービス・レベル管理の製品を強化し、2009年10月にシステム性能分析ソフトウェア「WebSAM Invariant Analyzer」をリリースした。従来の性能監視ではエラーメッセージが通知されない性能劣化(サイレント障害)などを特定できるツールで、独自開発の技術によってシステムの「性能情報間に存在する不変関係(Invariant)」を学習し、稼働状況を照らし合わせて不変関係の異常を検知・原因の特定を可能にする。「他社の製品であっても、性能情報さえ取得できれば導入できるため、引き合いが増えている」(NECの第一システムソフトウェア事業部兼ITプラットフォームマーケティング本部の吉羽幹夫エンジニアリングマネージャー)という。
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NEC 吉羽幹夫 エンジニアリングマネージャー |
企業システムでは運用管理コストを削減するため、仮想化技術を使ってサーバーを集約・統合する方向に向かい、将来的にはクラウドへの移行も考えられる。各社ともにクラウドを見据えた仮想環境の運用管理は今後の成長株とみている。
仮想化については、物理マシンと仮想マシンが混在して、運用管理がより複雑化してしまう。仮想化の広がりにつれ、運用管理製品の必要性が高まっているのだ。
企業規模問わずエンドポイント重要
中堅・中小向けの安価製品も 一方、中堅・中小企業で運用管理のニーズが高いのは、デスクトップPCの管理だ。企業規模に関係なく、ウイルス感染などの外部脅威や、情報漏えいといった内部脅威のリスクにさらされている。「コスト削減強化といった意味でも、エンドポイントへの投資は欠かせない。余剰資産の洗い出しやライセンス期限の管理はコスト削減やコンプライアンスにつながる」(IDC Japanの入谷氏)。
日立製作所では、統合運用管理製品「JP1」の姉妹製品で、PC運用管理機能に特化した「JP/1 Desktop Navigation」の販売を今秋から開始した。ITの専門家がいない中小企業でも簡単に、安価に導入、運用でき、セキュリティリスクを排しながらIT資産の適正化を実現することとなり、コスト削減の一助となる。
デスクトップの保護は、企業規模に関係なく重要な課題だ。安価な製品が市場に投入されれば、需要はいっそう高まるだろう。