参照モデルをSOA開発に活用
ベンダー間共通のフレームワーク構築へ
フレームワークを構築へ  |
テクノロジー コンサルティング本部 ITストラテジグループ統括 エグゼクティブ・パートナー 立花良範氏 |
今年5月、日本IBMと同社ビジネス・パートナー(BP)の国内ITベンダー約70社は、IBM製品群などを利用しSOA(サービス志向アーキテクチャ)ビジネスを国内で開花させる協力組織「SOA Partner Community(SPC)」を立ち上げた。このSPCの理事長として陣頭指揮を執るのが、アクセンチュアの立花良範・テクノロジー コンサルティング本部ITストラテジグループ統括エグゼクティブ・パートナーだ。
アクセンチュアには、通信や電力、ハイテク、製造、金融などの大手企業に対するシステム構築で活用しているSOA基盤が備えるべき機能をパターン化した参照モデル「SOAリファレンスアーキテクチャフレームワーク」がある。「SOAをデザインし導入する際の“鑑”となるアーキテクチャフレームワーク」(立花氏)で、これを参照しながら既存製品やサービスをマッピングすれば、包括的なITシステムを短期間で構築が可能だ。このフレームワークをSPCのSOAビジネスを拡大する活動に生かしていく。
SOAビジネスは、システムを効率よく最適化する設計手法として期待されたが、浸透度は低い。立花氏は「現状のシステムをSOAベースで再構築することを提案するが、内容が抽象的で、かつ将来的なシステム設計やROI(費用対効果)のロードマップを示せていない。そのため、ユーザー企業に受け入れられていない」と、SOA提案の難しさが阻害要因になっているという。
アクセンチュアが提供する「SOAアーキテクチャフレームワーク」は、企業のITアーキテクチャのスムーズなSOA対応を支援する。既存のITインフラへ新規システムの統合が容易で、どのような技術基盤を構築するかも明確化できる。SOAに取り組む際、導入目的や効果、SOAへの対応力と現状のギャップ、導入前後のロードマップ、ROIを企業側へ明確に示すことができる。
クラウド・SaaS見据えた展開を SPC内には、独自のノウハウを持つSIerやパッケージベンダーなど異なる領域で活躍するプレーヤーがいる。このため、「異なるプレーヤーが協業することで、具体的にどんなSOAビジネスを展開できるのか検討する必要がある」(立花氏)と、アクセンチュアのフレームワークやIBMが提供するSOAベースの開発を容易にするカスタマイズ開発用テンプレート「WebSphere Industry Content Pack」、各ベンダーの製品やソリューションを組み合わせSPC独自の提案用フレームワークの土台を構築する計画だ。
リーマン・ショック以降の景気低迷を受け、IT資産クラウド化へのニーズが高まりつつある。立花氏は「SOAを口に出して提案しなくても、SOAベースでの構築ニーズは高まっている」と判断。今後は、コスト削減の一環で注目度が高まるクラウド・SaaSの導入を視野に入れた提案の在り方も、こうしたフレームワークで取り入れていく必要があると考えている。(谷畑良胤●取材/文)