中小のソフト開発企業を会員に抱える日本情報技術取引所(JIET)は、2009年11月、同団体にとって初の試みとして、会員企業に対して「景気動向アンケート調査」を実施した。「身近な景気動向」を調査し、会員企業に伝えるのが狙いだ。今回、「週刊BCN」編集部では、その調査結果資料をJIETから入手した。そのデータをもとに、中小ソフト開発企業の実情を伝える。
全国の中小ソフト開発企業が会員 JIETは、中小のソフト開発企業がITベンダーの下請けではなく、元請けとしても開発案件を受注できるように、ユーザー企業から案件情報を収集し、その情報を会員企業に提供する役割を担っている。そうした事情から、会員企業は、中小のソフト開発企業が多い。会員企業は約1130社・団体で、全国9か所に拠点を構えており、東名阪などの主要商圏だけでなく、全国に会員が散在しているのも特徴だ。
大手のソフト開発企業が中心の業界団体や、限定された地域に会員企業が絞られている団体が多いなか、中小ソフト開発企業を全国的に会員として集めているJIETは、IT業界でも稀な存在だ。
今回の調査は、2009年11月5~30日にアンケート形式で実施。144社から有効回答を得た。回答した会員企業は、従業員数100人以下が全体の85%を占めている。主な取引先としては同業者、つまりITベンダーから下請けとして受注するケースが多く、全体の76%となっている。
商談数減少、単価も下落 主な調査結果を紹介すると──。
まず、昨年度下期(08年10月~09年3月)と比較して今年度上期(09年4月~9月)の商談量の増減について、全体の71%が「非常に不足」と回答。「少し不足」の回答を加えると、95%にも達した。「過剰」および「少し過剰」はわずか2%で、不況の影響を大きく受けていることが分かる。
下期(2009年10月~10年3月)の商談量の予想は、「非常に不足」が61%、「少し不足」が28%で、両回答を合わせると89%。一部の大手ソフト開発企業からは、下期に回復傾向をみせるとの声も聞こえるが、商談件数の減少傾向は依然として変わらず、下期も苦戦を強いられている。
さらに、開発案件の単価についての設問からも厳しい状況がみて取れる。08年と比較して09年は単価が「下落傾向」と回答したのは、全体の80%。「少し下落傾向」は16%で、合算すると96%を占める結果となった。案件数が減少しながら、1案件の価格も下がるという、まさに二重苦の現実が浮き彫りになっている。
契約形態については、「派遣契約が増加」が20%、「業務委託(準委託)契約が増加」が11%、「請負契約が増加」が8%。「昨年と大きな違いがない」が61%となった。案件数が減少し、単価の下落が鮮明だが、契約形態については大きな変化はみえていない。
不況の影響で大手ソフト開発会社も苦しい状況だが、その下請けとして開発を手がけるソフト開発会社は、それ以上に厳しい。大手に比べて、景気の回復時期は遅れてやってくるだけに、中小のソフト開発会社の業績が回復するには相当の時間がかかりそうだ。