セールスフォース・ドットコム(宇陀栄次社長)がOEMパートナープログラムを導入した。すでに富士通やNECなどの大手ベンダーのほか、日本オプロ、マッシュマトリックスといった中堅・中小ISVがOEMパートナーに連なる。OEMパートナープログラムの導入で、とくにその恩恵を受けるのは企業体力の乏しいISVだ。すでに海外進出を果たしたり、ユーザー数を伸ばしていたりするISVの事業拡大をさらに後押しすることになる。
セールスフォースのOEMパートナープログラムがもたらす“商流”の大きな変化はこうだ。セールスフォース・ドットコムは、「Force.com」のプラットフォームライセンスをSIerあるいはISVにOEM提供。パートナー企業は、CRM機能を除き、基幹システムや人材管理などのアプリケーション開発に必要なクラウド基盤「Force.com」プラットフォーム機能のすべてが利用できる。「パートナー企業は、「Force.com」の機能を自社のアプリケーションに組み込み、独自の料金体系でリリースする。
ISVにとっては、SIer経由で販売するかどうかを含めて、「各社が自社にとって有利な方法を選択できる」(宇陀社長)ようになっており、「パートナー企業がユーザーに提供する価格の数%のマージンを、セールスフォース・ドットコムが受け取る」(保科実・常務執行役員アライアンス&サービス統括本部長)という形をとる。
SIerやISVにとっては、独自の販売チャネルに加え、インターネット上のマーケットプレイスである「AppExchange」を通じ、6万7000以上のセールスフォース・ドットコムのユーザーに販売できるのが大きなメリットだ。ユーザーは、ERPやSCM、HRなどのカテゴリからアプリケーションを選択し、数クリックでインストールすることができる。
「Force.com」上でアプリケーションを配布するには、三つのステップを踏む。(1)OEMパートナープログラムに参加、(2)無償のDeveloper Editionのアカウントを取得して開発を開始、(3)「AppExchange」を利用してセールスフォース・ドットコムのユーザーに販売──となっている。
初期投資の削減やマルチテナント化による運用コストの最小化、開発工数の削減、システム連携の容易さといった側面に大きな魅力を感じているISVは多い。帳票ソリューションを主力とする日本オプロの里見一典社長は、「もともと自社のデータセンター(DC)で運用していた」が、それが不要になり、「OEM化は非常に意味がある」と断言する。セールスフォース・ドットコムが運用管理やセキュリティを担保することで、大幅にコストを削減し、大企業ユーザーのセキュリティに対する不安感を払しょくすることができたのだ。すでに欧米のSalesforce CRMユーザー約600社が利用しているという。
経済不況にあえぐISVにとっては、新たなビジネスチャンスの“光明”をもたらしそうである。自力では海外展開が難しいISVは、OEMパートナープログラムに参加することで、巨大なグローバルマーケットに自社製品を一気に展開することができる。(信澤健太)