システム開発の作業項目を定義し、ユーザー企業とITベンダーの双方が共通して利用できるようにすることを目的とするガイドライン「共通フレーム 2007」。このガイドラインの中小企業への浸透度に遅れがみられる。
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| 長谷部武研究員 |
情報処理推進機構(IPA)の長谷部武・ソフトウェア・エンジニアリング・センターエンタプライズ系プロジェクト研究員はこう分析する。プロジェクトマネジメント・オフィス(PMO)などの部署を設置している大手ベンダーであれば、「共通フレーム 2007」をそのまま適用せず、自社の開発標準と対応させていくマッピングを実施。一方、中小ベンダーは「共通フレーム 2007」の存在自体は知っていながら、「見て参考にする余裕があまりなく、日常の業務に追われている」状況というのだ。
2009年の2月から10年の1月にかけて開催されたソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)主催のセミナーで回収したアンケートの結果からは、自社の開発標準と「共通フレーム 2007」をマッピングしている企業は「総じて、適用度は低い」状況が確認された。知名度は徐々に向上はしているものの、3分の1程度の参加者がまったく知らないと回答した。この調査で課題が浮き上がってきたといえる。「共通フレーム 2007」が実際に広く活用されているとは言い難く、障壁が存在するということである。
とはいえ、“爆発的”にではないが、と前置きしつつも、「産・官・学における活用は、着実に拡大している」と長谷部研究員は強調する。ITベンダーでの標準化だけでなく、教育機関や企業、ITコーディネータ(ITC)などの教育などで活用されているという。あくまでも長谷部研究員が独自に実施したWeb検索による調査結果だ。「共通フレーム 2007」は、「超上流」の考え方を取り入れたり、取引の適正化を図ったりしているが、システム開発現場の実態については、これから本腰を入れて調査していくともしないとも明言は避けた。
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山下博之 プロジェクトリーダー |
山下博之・ソフトウェア・エンジニアリング・センターエンタプライズ系プロジェクトプロジェクトリーダーは、「中小企業へのヒアリングは年に1回行っている」と説明する。改善すべき点や課題は認識しており、2011年に向けた具体的な施策を検討している。
例えば、受託の部分だけを抜き出して、ガイドを作成したり、特定用途に即して「共通フレーム 2007」を簡略化する考えがあることを明かす。活用方法についてもガイダンスの作成を目指していたが、とん挫した経緯がある。現在は適用事例を収集しており、東京や大阪以外の地域で講演する際に紹介できるよう企画していく必要性を感じているという。実現性はあるのか定かではない。予算の問題も…と口を濁しつつ説明する場面もあった。抱えている諸々の問題に対処できていない実情が読み取れる。(信澤健太)