日本市場に参入する韓国ベンダーの台頭が目立つ。事業の成功のカギを握るのは、パートナー企業の獲得と協業の推進だ。一番のネックとなっている課題であり、チャネル網の構築に成功した韓国ベンダーは、すでに日本に根を下ろしつつある。
「製品のクオリティ」「資金力」「現地化」がキーワード
韓国政府の国営貿易投資振興機関で、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の東京IT支援センターの呉昶烈氏は、日本で成功するには、「製品のクオリティ」と「資金力」「現地化」がカギを握るとみる。「現地化」には、パートナー企業の選定が成否を左右する。こんな例がある。リモートサポートシステムを開発・販売するRSUPPORT(アールサポート)は2002年、日本に参入してから2年ほどは鳴かず飛ばずだったが、大塚商会と代理店契約を結んだことで、主力製品で遠隔サポートツール「RemoteCall」の売り上げが伸びたという。
韓国ベンダーの特徴として、小規模ながら“一芸”に秀でた技術指向のソフトウェアベンダーが多いことが挙げられる。内訳をみると、韓国政府がITベンチャー支援制度を設けているためか、独立系のベンダーが中心となっている。一方で、「サムスングループなど財閥系企業からのスピンアウト」もあり、プレーヤーは独立系のITベンチャーと財閥系に二分される。なお、日本に進出する韓国ベンダーは、すでに韓国では圧倒的なシェアを獲得しているケースが多い。
呉昶烈氏によれば、韓国には現在、6300社程度のソフトウェアベンダーが存在し、418社が海外に進出。このうち200社は「心理的に距離が近い」日本で販売活動を展開しているという。ただ、この数字は「海外にオフィスを構えていない」ベンダーに限定したもの。日本に支社を構えているベンダーは100社を超える。前出のRSUPPORTやビジネスプロセス管理ソフトウェアを展開するハンディソフトなどがその例だ。
東京IT支援センターは、韓国ベンダーの日本進出を支援している組織。日韓ベンダー間の商談の機会を設けたり、セミナー開催などを通して企業経営支援を行ったりしているほか、ソフトウェアの検証環境を提供。韓国からインターネット経由で、東京IT支援センターにあるショールームの仮想OS環境に接続し、遠隔操作で検証が可能となっている。韓国情報通信技術協会(TTA)のGood Software(GS)認証制度の選定を受ければ、資金援助や日本での商談機会の提供などさまざまな特典を受けることができる。GS認証制度は、韓国政府の公認ソフトウェア品質認証制度で、「韓国では累計1000社は認定を受けた」という。
現在16社がフロアに入居し、すでに57社が“卒業”した。事業に失敗し、「撤退した」ベンダーも少なくない。呉昶烈氏は、韓国ITベンダーが日本市場を開拓するのに難渋する要因について、「パートナー企業の開拓が難しい。加えて、品質管理の基準が厳しい」と、その理由を挙げている。(信澤健太)

東京IT支援センター内のショールーム