ソフトバンクBB(SBB、孫正義社長兼CEO)が展開するSaaS型サービス「TEKI-PAKI」が好調だ。2009年度(10年3月期)の獲得純増ユーザー数は、07年1月にサービスを開始してから過去最高の伸び率を記録した。SBB傘下の販社が「TEKI-PAKI」を“ドアノックツール”として提案する体制が確立できつつあるのが大きい。「間接販売モデルを築きにくい」という壁を、ソフト流通最大手が乗り越えようとしている。
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| 片山弘一統括部長 |
「TEKI-PAKI」は、SBBがニーズが強そうなサービスを厳選してメニュー化したSaaSの総合ブランドだ。「闇雲に(サービスの)数を追い求めるのではなく、売れる商品だけでラインアップする」(片山弘一・コマース&サービス統括CP事業推進本部AdvancedICT第1統括部統括部長)戦略で、サービス数は15種類に絞っている(4月中旬時点)。SBBは、流通事業者らしく、サービス開始から約4年間、直販ではなく販社経由の間接販売を貫いてきた。毎月の売り上げを販社とシェアする仕組みで展開している。
昨年度、不況でIT業界は総じて冷え込んだが、「TEKI-PAKI」は過去最高の伸び率を記録した。その理由は、ソフトウェアの流通でつき合いのある販社が、SaaSの特性を理解し、「TEKI-PAKI」の有効に使い始めたからだ。
片山統括部長は、「月額料金が数百円~数千円程度の『TEKI-PAKI』が、パートナーにとってメインビジネスになるわけはない。ただ、手離れがよく短期に商談をまとめられ、少額でも毎月売り上げがあがる。ユーザー企業に気軽に提案できるのは、他のサービスにはない利点。メインビジネスにつなげるための“ドアノックツール”として活用してくれているのではないか」とみている。販社にとっては、月額数百円のビジネスでもつき合いが始まることで、それをきっかけにユーザー企業を訪問しやすくなり、他商材の拡販に結び付けるチャンスが生まれるというわけだ。
「TEKI-PAKI」のリセラー数は、4月中旬時点で約330社にまで増えた。北は北海道から南は沖縄まで点在しており、年商規模も数千万円の有限会社から東証1部上場の大企業まで名を連ねる。多種多様な販社を組織したことで、ユーザー層は広がり、「当初は従業員数100人以下の中小企業が中心だったが、今はそれに加えて、1000~3000人規模の企業が部門導入するケースも増えてきた」(片山統括部長)。
SaaSはドアノックツール──。訴え続けてきたコンセプトが、ようやく浸透し、「TEKI-PAKI」が本格的に流通し始めた。(木村剛士)