オープンソースのOS「Android」を搭載したスマートフォンが続々と登場し、ユーザーの関心を呼んでいる。華やかな舞台の裏側で、オープンなプラットフォームであるためにセキュリティの懸念を指摘する声もあがっている。こうした状況にあって、マカフィーは、Android OSを搭載したスマートフォンを保護する「McAfee VirusScan Mobile」テクノロジーを韓国で提供開始したと発表した。スマートフォンの市場や、マカフィーのモバイル戦略について話を聞いた。
モバイル向けは02年から提供開始
注目のAndroid、リスクも大きい  |
| 大岩憲三取締役 |
このところ、スマートフォンが急成長している。2009年、スマートフォンの市場はグローバルで1億7240万台、前年対比23.8%の伸びを示した(ガートナー調べ)。iPhoneが好調なほか、Android携帯も次々とリリースされ、シェアを伸ばしている。
Androidは、スマートフォンだけでなく、情報家電やカーナビといった情報端末への応用が模索されている。自由に開発できるOSSの特性を生かし、活用の幅が広がりつつある。一方では、オープンなプラットフォームであることに起因する問題点も浮かび上がってきている。誰でもアプリケーションを開発することができるため、セキュリティの面でリスクを抱えているのだ。モバイル機器全体についていえば、マカフィーの独自調査では、02年からの8年間で700種類ものマルウェアが検出されたという実態がある。
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石川克也 プログラムマネジャー |
マカフィーは、PCなどへのセキュリティソフトのプリインストールを戦略の軸として自社の技術の導入実績を増やしてきた。02年からは携帯電話向けに「McAfee VirusScan Mobile」テクノロジーを提供している。同社のソフトはSymbianOSを含む12のOS、100機種に対応し、現在までに1億台以上の携帯電話に搭載されている。日本では04年から提供を開始し、NTTドコモのFOMA機種すべてにプリインストールされている。同社のCSB事業本部・大岩憲三取締役事業本部長はスマートフォン分野の脅威について、「とくにBtoBtoCでのリスクになるが、米国ではインターネットバンキングを行う際に7割のユーザーがスマートフォンを利用している実態があって、フィッシングの脅威について対策を要望する声が高まっている」と現状を語る。
02年当時の脅威は、感染した携帯端末のBluetoothを使って勝手に通信して電池の減りを速くする、もしくは待ち受け画面にどくろマークを表示するといった、たわいのないものだった。それが、いまや金銭目的に変質している。「具体的には、海外で展開しているデータ通信料の課金方式である『プレミアムSMS』や『ダイヤルQ2』などに接続して金銭が詐取されてしまうといった具合だ。日本ではまだこうした被害は報告されていないが、時間の問題だろう」(技術本部 石川克也・モバイルエンジニアリング プログラムマネジャー)と警鐘を鳴らす。

「McAfee VirusScan Mobile」。外部メディアを含めスキャン、ウイルスを検出する
スマートフォンの保護を加速
IPでつながるあらゆる環境を守る マカフィーは今年5月、韓国のSKテレコムが販売するAndroidやWindowsMobile搭載のスマートフォンにセキュリティ技術を提供したと発表した。SKテレコムの契約者はアプリケーション販売サイト「TStore」から無償ダウンロードできるようにしている。スマートフォンにダウンロードしたソフトで電源起動時に自動スキャンするほか、手動スキャン、外部メディア内挿入時やSMS送受信時のリアルタイムスキャン、定義データベースの自動・手動データアップなどが可能となっている。これを皮切りに、Androidを柱とするスマートフォン向けのセキュリティ技術提供を加速する考えだ。
大岩取締役は「当社には、02年からエンべデッドビジネスの実績を築いてきたという基盤がある。また、社内にモバイルの専門家を抱えていることも差異化要素の一つで、パートナーとのビジネスにおいて、カスタマイズの要望にも柔軟に応えることができる」と、優位性を強調する。日本においてもSKテレコムのように通信事業者、端末メーカーなどのパートナーを開拓し、早期のビジネス立ち上げを目指す。
iPhoneは独自OSのために、OSそのものの安全性は高いが、ユーザーの年代層が広がるなかで新たな問題が発生する可能性がある。同社は、年内にiPhone向けにペアレンタルコントロール(親による子供の端末使用制御)を含むウェブセキュリティを提供する計画だ。
話題となっているタブレット型情報端末「iPad」など、インターネットに接続するデバイスは増加の一途をたどっている。「マカフィーにとっては、7~8年をかけて開発に投資をしてきたこともあって、ビジネスを軌道に乗せるのが命題だ。IPリーチャブル(IPで到達可能)な環境が拡大していけば、そこには必ずリスクが存在する。OSや環境を問わず、将来的にはクラウドから一元的にあらゆる端末を保護できる環境を構築したい」(大岩取締役)としている。(鍋島蓉子)