アドビ システムズ(クレイグ・ティーゲル社長)とソフトバンクBB(孫正義社長)およびBCNは、7月22日、東京のベルサール八重洲で「SAM市場攻略セミナーVol.1」を開催した。セミナーには、ライセンス販売を行うSIerやソフトウェアベンダー、コンサルティング会社の関係者ら約60人が参加。登壇した講演者は、適切なSAM(ソフトウェア資産管理)を提供することによって顧客と長期的な関係強化を図ることができ、ビジネス拡大にもつながることを、各社の取り組みや実績を踏まえて説明した。参加者は新たなビジネス機会を創造するヒントが得られるとして、熱心に聴講していた。
アドビ システムズ、ソフトバンクBBとBCNの3社のタイアップで
SAM市場攻略セミナーを開催
賠償金分だけSAM市場がある 国内の企業や団体において、このところアドビやマイクロソフトなどの製品の「不正コピー」の発覚が急増している。石川県や北海道庁などの自治体が、不正発覚後に数千万円単位の賠償金を支払うという事件がマスコミを賑わせたのは記憶に新しい。
ソフトウェアの適切な棚卸しと資産管理がきちんと行われていないために、IT管理者などが内部の不正利用を見逃しているケースが散見される状況だ。今回のセミナーでは、こうした不正を防ぐだけでなく、システムを提供する側のSIerなどが適切なソフトウェア資産管理(SAM)を提供することで、コストの削減ができるだけでなく、顧客と長期的な関係を構築することができることを講演者が提言した。
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| コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事 |
セミナーの冒頭に登壇したコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事は、「日本の不正コピー率は21%と、世界のなかでも低く、米国に次いで2位。実質的には、日本が最もコンプライアンス(法令順守)ができていると自負していい。それでも、不正コピーによって日本の企業がメーカーに支払った損害金額は、1838億円に達する」と、現状を報告した。「SAMの市場規模は不明だが、少なくともこの損害金程度の規模は、国内にあると判断できる」と、SIerなどがSAMを展開するメリットを語った。
ライセンス販売を行うには、ソフトウェアの使用許諾のルールや契約の締結方式、ライセンス形態(ボリュームライセンスなど)を理解する必要がある。一方、顧客はライセンスに関して遵守すべき事柄をすべて理解しているわけではない。「誰かが管理しているに違いない」(久保田専務理事)という認識不足が、企業・団体の内部の不正コピーを増殖させる要因になっているため、「意識的な管理が必要」と、SAMで組織内のIT資産を見直す需要が増している現状を語った。
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| アドビ システムズの宮澤啓一郎・ソフトウェア資産管理&ライセンスコンプライアンスソリューションシニアマネージャー |
これを受けて登壇したアドビ システムズの宮澤啓一郎・ソフトウェア資産管理&ライセンスコンプライアンスソリューションシニアマネージャーは、SAMの定義や実施目的、重要性を説明。「SAMはISO/IEC19770-1」によって国際的に規格化されている」と、企業としてSAMへの取り組みが国際的に要請されていると述べた。「SAMをきちんと実施しなければ、企業は法的・経営・ITリスクを抱えたままの状態にある」と、ITガバナンスを確立するうえで、SAMは避けて通れない課題だと指摘した。
同社は今年度から、エンドユーザーのSAM構築支援を目的として「SAMパートナープログラム」を強化している。これには、(1)コンサルティングサービス(2)ライセンスソリューションサービス(3)トレーニングサービス(4)インベントリサービス(5)確認サービスがある。
現在は、18社のパートナーがこの制度に登録し、個々に活動を展開中。顧客のSAMに関する問題解決をサポートし、パートナーを通じて「安心チェックサポート」も提供している。宮澤マネージャーは、「エンドユーザーの棚卸しを実施し、その際に不足分が発見された場合、ソフト資産管理体制を整備することを約束してもらえれば、不足分の賠償責任を免除する」と説明。また、「ソフトバンクBBをはじめ、アドビのSAMパートナー各社に問い合わせていただければ、当社ライセンスの適切な棚卸しに取り組むことができる」とアピールした。
パートナー制度充実、参加募る  |
| ソフトバンクBBのコマース&サービス統括CP事業推進本部ADICT統括部ライセンスコンサルティングセンターの門内充氏 |
続いて、アドビのSAMパートナーでもあるソフトバンクBBのコマース&サービス統括CP事業推進本部ADICT統括部ライセンスコンサルティングセンターの門内充氏が登壇。「IT流通で培ったナレッジをもつコンサルタントが、顧客に対して直接、ソフト導入から管理まで提案できる体制を敷いた」と、同社の「ライセンスコンサルティングセンター(LCC)」を紹介。門内氏は「顧客へのヒアリングを経て、最適なライセンスプログラムの選定と提案をすれば、劇的なコスト削減効果が生まれる」と、自信を示した。アドビ製品を100本調達する必要がある場合で、製品版を利用すれば4000万円必要だったコストが、ボリュームライセンスやアップグレードライセンスなどを駆使することで、1500万円に抑えることができるという。
しかし、ライセンスを低価格で購入しても、ユーザー企業側できちんとIT資産管理ができるケースは少ない。そこでソフトバンクBBでは、コンサルティングサービスを提供している。「インベントリ情報とライセンス購入履歴情報を確認したあと、ライセンスの突合作業を当社専任担当者が実施する」(門内氏)と、アドビ製品以外のソフトも含め、適切な管理方法をアドバイスする。
また、「ライセンス・マッチング・レポート」をSaaS型で提供。棚卸しや突合結果をもとにしたソフトウェア資産管理状況の実態把握と余剰資産などの有効活用につなげる提案をした。
ソフトバンクBBは、「SAMコミュニティ&パートナー」制度を設け、SIerやソフトベンダー、監査法人、リセラー、業界団体などとの連携を深めている。「共同プロモーションなどを行い、SAMの理解促進・普及を進める」(門内氏)と述べた。