ミロク情報サービス(MJS、是枝周樹社長)は、2010年度(11年3月期)を「我慢の年」と定め、三つの重点施策として「高収益体質への改革」「経営基盤の強化」「顧客基盤の拡大」を掲げる改革に乗り出した。人材育成の強化や製品ラインアップの統廃合、新製品の投入、新規ユーザーの開拓などを推進。まずは、これまでの弱点の洗い出しから始めている。
MJSは開発体制の刷新を急ぐ。下流工程の負担を減らすことで、品質向上やコスト削減を狙う。「エンタープライズアーキテクチャの手法で全製品の見直しを図っている。上流工程のバグが1だとすれば、下流工程でこれが30倍に膨れてしまう。これまでの開発は、まるで熟練した左官の仕事のようだった」(是枝周樹社長)。これを機に、製品の統廃合に着手するほか、新製品開発にもリソースパワーを振り分け、開発面での競争力を強化する考えだ。
経営基盤の強化という観点からは、人材教育に注力する姿勢をみせる。プロジェクトマネジメント研修などの教育プログラムを充実させて、提案能力の育成を体系的に推し進める方針だ。
これは、コンサルティング営業によるソリューションビジネスのボリューム拡大に結びつける取り組みでもある。新規開拓に向け、会計事務所との関係強化や顧問先企業向け廉価版会計ソフトの拡販、国際会計基準(IFRS)対応などの機能強化も進める意向だ。
高収益体質への転換に向けた施策は、開発体制の刷新のほか、全国拠点の整備にも及んでいる。具体的には、ユーザーと直接接点がある29にのぼる全国の販売拠点を活用し、保守サービスを内製化。外注費削減と値引きの抑制で、保守サービスの高収益化を目指す。関西と中部地区では規模の拡大に伴う人員増を図る考えだ。
11年3月期までに、新規ユーザーを開拓することで、昨年度約63.5%だった保守サービス収入の粗利益率を64%近くまで引き上げる計画。ここ数年は右肩上がりで推移しており、達成はほぼ確実とみられる。
クラウド/SaaSで今のところ目立った動きはみられないが、“仕込み”の段階にあるようだ。SaaS提供については、経費精算や勤怠管理など「簡単なところから始めればよい」(是枝社長)と話すにとどめる。
すでに新興勢力のアカウンティング・サース・ジャパンは、会員となる会計事務所と協力して会計事務所・顧問先企業向けシステムを開発する「SaaS会計事務所プロジェクト」(A-SaaS)を立ち上げ、10年9月にSaaS提供を開始することを明らかにした。会員事務所には、SaaS会計システムとSaaS給与システムを利用できる顧問先向け無償IDを提供する方針だ。
会計事務所の領域では、日本デジタル研究所も格安のSaaS提供を開始した。「我慢の年」を経て、いま手を打たなければ、これからのクラウドを巡る動きで遅れをとることになる。(信澤健太)