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富士通 中小クラウドの「チャネル支援」始動 今年度下期早々にスタート
2010/09/30 21:07
週刊BCN 2010年09月27日vol.1351掲載
2015年度(2016年3月期)までに国内クラウドコンピューティング市場シェアを20%にする目標を掲げている富士通(山本正已社長)は、中堅下位から中小企業向けにクラウド・サービスを販売するパートナー支援戦略を下期早々に開始する。08年に開始した「SaaSパートナープログラム」をITインフラ領域まで拡大。この戦略では、SaaSやプライベート/パブリックの両クラウドを販売するチャネル施策を展開するほか、パートナーの「新ビジネス創出」方法などをサポートする模様だ。旧オフコンディーラーなどの系列パートナーを含め、既存チャネルをクラウド推進でフル活用する。
富士通は現在、SMB(中堅・中小企業)向けERP(統合基幹業務システム)「GLOVIA smart」を中核とした業種特化と共通業務の二つの分野に分けた「SaaS商品マップ」を企画・開発しているところだ。現在までに独立系ソフトウェアベンダー(ISV)などの製品を加えて42種類を商品化。10年度下期には、ナレッジ管理の「農業管理」や建設業向けERP「CAP21」、橋梁点検サービス向け「橋梁SaaS(仮称)」などを順次リリースし、富士通のクラウド基盤から利用できる体制を充実させている。
また、11年の年初には、マイクロソフトとの戦略的アライアンスで構築されたクラウド・サービス「FJ-Azure(仮称)」を開始。Windowsベースで開発されたISVなどのパッケージソフトをAzureベースでSaaS提供する。このサービスでも、既存パートナーを中核とした販売体制を整え、他社製品のSMBユーザーの攻略も積極化する。
同社は、これらSaaSサービスを再販するチャネル体制を構築することにとどまらず、SaaSサービスのほかに、同社や他社のプライベート/パブリックの両クラウド基盤の技術ノウハウ、あるいは既存のクライアント・サーバー型(C/S)のシステムなどを組み合わせて「新ビジネス」を創出できるように、パートナーに対してコンサルティングを行う。それをトータルに支援する戦略を10年度下期の期初に開始するわけだ。
このパートナー制度の対象とするITベンダーは、まずは同社のSE子会社や旧オフコンディーラーでC/Sや自社アプリケーションをもってソリューション展開する全国の系列パートナーだ。将来的には、競合他社系列のパートナーも攻略する構想もある。
齋藤範夫・クラウドビジネス推進室担当課長は「社内のワーキンググループで検討を重ね、その内容をもとに戦略を打ち出す。多くのパートナーが富士通にアクセスしてきて、ビジネスモデルの在り方で悩みを打ち明けてくる」と実情を語る。クラウド時代にどのようにビジネスモデルを転換し、収益をあげるようにするかの方向性を決めかねているパートナーを全面的にバックアップしていく。
富士通は、08年初めにSaaSサービスの提供を開始し、同時に「SaaSパートナープログラム」を整備した。サービス内容は大きく分けて三つ。SaaSビジネスの実行基盤を提供する「SaaSプラットフォームサービス」、業務アプリケーションなどをネットワーク経由で活用できるようにする「SaaSアプリケーションサービス」、ユーザー企業やパートナー企業のシステムを一括して請け負う「SaaSビジネスアウトソーシングサービス」である。
さらに今年は、経済産業省が構築したSaaS基盤「J-SaaS」を引き継ぎ、中小企業向けのSaaSサービス提供を本格化する体制を整えている。齋藤担当課長は「Windowsや中小企業領域は、当社が弱い分野だった。クラウド提供になれば、こうした領域を補うことができる。しかし、当社の担当者が中小企業を1社1社巡回して営業することは物理的に無理。改めて、顧客接点のあるパートナーを生かす必要性が高まってきた」とみている。クラウド市場で20%のシェアを獲得する目標を掲げているが、「SMBを攻略して、社会インフラ系の売上高も伸びれば、シェア25%には伸ばせる」(同)と自信を示している。
【関連記事】クラウド独特の技術伝授がカギ
パートナーの悩み解決に光明さす
富士通は、2008年頃からSaaS・クラウドコンピューティングの基盤整備に本腰を入れてきた。この間、同社から聞こえてくるのは、既存ユーザーである中堅・大企業のITインフラを「プライベートクラウド」に置き換える戦略ばかりだった。
つまりは、既存のクライアント・サーバー型(C/S)システムを徐々にクラウド化するという時流に乗って“再囲い込み”したにほかならず、これといって新しいモデルが創出されたわけではなかった。そして、この間に全国に散らばる同社のSE子会社や系列パートナーは、富士通の出方待ちを余儀なくされた。それを待てないパートナーは、自前で自社アプリケーションをSaaS化したり、自社データセンターでSaaSもどきのサービスを提供するなど、時流に乗ろうと必死にもがいていた。
その意味では、ようやく“親方”が指揮棒を振り、パートナー側で富士通を選択すべきかどうかの判断が下せるようになったわけだ。従来のビジネスモデル/収益構造に縛られて身動きが取れず、クラウドに関連する技術ノウハウがなく、迷走したままのSIerは少なくない。「従量課金制のSaaSなどを販売して収益構造が変わっても、大丈夫か」「クラウドサービスをどうつなげて提供すれば顧客は喜ぶのか」など、悩みは尽きなかったはずだ。
富士通がパートナーの「新モデル創出」を支援するとはいえ、既存のビジネスモデルを転換することは難しい。というのも、顧客へのシステム提供方法がガラリと変わる可能性があり、しかも従来のソリューション開発に必要な技術開発と、クラウドを構築するための技術ノウハウとでは、要求される能力が異なるからだ。
クラウドを使ったSI(システムインテグレーション)となれば、サービス部品をマッシュアップして組み立てる必要がある。しかも、要求の厳しい日本の企業のニーズに応えなくてはならない。この技術伝授を確実に行わない限り、富士通のパートナー戦略の成功は覚束ないだろう。(谷畑良胤)
2015年度(2016年3月期)までに国内クラウドコンピューティング市場シェアを20%にする目標を掲げている富士通(山本正已社長)は、中堅下位から中小企業向けにクラウド・サービスを販売するパートナー支援戦略を下期早々に開始する。08年に開始した「SaaSパートナープログラム」をITインフラ領域まで拡大。この戦略では、SaaSやプライベート/パブリックの両クラウドを販売するチャネル施策を展開するほか、パートナーの「新ビジネス創出」方法などをサポートする模様だ。旧オフコンディーラーなどの系列パートナーを含め、既存チャネルをクラウド推進でフル活用する。
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