富士通(山本正己社長)はプライベートクラウド構築のための製品群と、支援サービスの提供を開始した。

 富士通では、ユーザー企業の間でクラウドが検討フェーズから企画フェーズに移行し、全社・グループ会社への共通サービス化の商談が急増しているという。これを受けて同社は、自社技術をコアに、クラウドサービスと共通のプラットフォーム・技術を提供するとともに、グローバルのパートナーと連携し、マルチベンダ環境の顧客に対して製品の提供を強化する。

 ソフトウェア ビジネスグループ長 執行役員常務の山中明常務は「顧客の資産継承を重要視し、継続に取り組むとともに、オープンで標準的な技術を用意するのが、富士通が提供する価値だと考えている。クラウドは、簡単ではない。顧客と一緒に考えて、議論をしながら段階的に進めていくのが重要だ」と話した。

山中明常務

 これまでクラウド関連の商談1500件の経験から、「マルチベンダーのプラットフォームを集約した稼働率の向上」「システム運用の自動化」「子会社に本社の業務サービスを標準化して利用させることによる効率化とスピードアップ」など、コスト削減、スピードアップに対して、顧客が高い期待を寄せていることがわかった。

 富士通では、プライベートシステムの変革について、「仮想化」「標準化」「自動化」という三つの要件を定義。部門最適によるサイロ型のシステムから、段階的にプライベートクラウドに移行することで、システムの全体最適化を進める。第1ステップでは仮想化技術を利用してサーバーを集約。顧客の業務を標準化して、サービスとして利用者に提供。サービスの配備手順や運用作業を自動化することで、部署を越えて共通の業務アプリケーションを利用できるようになる。

 また、構築したプライベートクラウドと、パブリッククラウドとの連携で、業務のさらなるスピードアップを支援する。

 富士通では、プライベートクラウドを構築する5製品を発表。上位の業務サービスを一覧で見せる「Systemwalker Service Catalog manager V14g」、標準化された業務システムを配備する「Systemwalker Software Cofiguration Manager V14g」、運用を自動化する「Systemwalker Runbook Automation V14g」と、サーバー、ストレージ、ネットワークを一つの仮想サーバーとして仮想環境を構築する「ServerView Resource Ochestrator」という4製品を新たに提供。加えて、パブリッククラウドとプライベートクラウド、既存の基幹システムのデータをプログラミングなしで連携させる「Interstage Infomation Integrator V10.1」を強化する。

 ミドルウェア事業本部の新田将人本部長は「今回の製品で、プライベートクラウドの基盤機能が提供されたと考えている。今後は、プライベートクラウドとパブリッククラウドの連携を自動化し、シームレスな連携を目指す。さらに「センシング」という新たな分野のニーズが高まることで、スケーラブルなデータセンターの処理を目指していく」と展望を語った。

新田将人本部長

 富士通では、今回の製品を、同社の「沼津ソフトウェア開発クラウドセンター」で導入し、社内利用している。沼津ソフトウェア開発クラウドセンターでは、国内6拠点、海外4拠点の計10拠点、4700人のソフトウェア開発者が、標準化した開発環境を利用している。

 これまで開発者は、製品開発環境をその都度用意していたため、作業負荷がかかっていた。センターでは、サービスカタログによって標準化した開発環境を「見える化」するとともに、サーバー、ストレージの仮想化と運用自動化を行っている。これによって国内6拠点に1800台あったサーバーを900台に集約。348種類あった開発環境を標準化し、51パターンに分類することで、7割程度の開発環境をサポートした。これによって運用コスト、設備投資で年間約7億円のコスト削減効果を得るとともに、360分程度かかっていた開発環境構築を10分程度に短縮し、CO2削減にもつなげた。

 この開発センターには新旧混在した多様なプラットフォーム環境を整備していることから、顧客のクラウド移行検証センターとしても活用していく計画だ。

 製品発表に伴い、プライベートクラウドの支援サービスの体制を強化した。システム生産技術本部の柴田徹本部長は、「今までのSIと同様、顧客先で顧客の指定した製品や富士通製品を中心に組み合わせてシステムを構築する。顧客のICT環境での仮想化・標準化・自動化の状況や、事業の目指す方向を確認し、システム統合やデータセンターで運用するものと、オンプレミスで運用するものを仕分けして、顧客のICT環境を最適な形にする」と話す。

柴田徹本部長

 プライベートクラウド支援サービスでは、顧客との共通認識を整理、業務要件のコンサルティングをしたうえで、インフラ、アプリケーション、運用サポートで、他のシステムとの接続性、シームレスな接続を確認しながら、クラウド環境の実装構築を進めていくという。

 富士通は、現在250名のクラウド技術に精通した人材を、第1四半期で700名体制に拡充する。