中堅SIerのなかで、アジア市場への進出に積極的なJBCCホールディングス(JBCC-HD、山田隆司社長)。大連、上海、広州と中国に営業拠点を矢継ぎ早に設置し、今年7月には東南アジアにも手を伸ばしてタイのバンコクに現地子会社を設けた。陣頭指揮を執るのは石黒和義会長。同氏は、9月中旬のインタビューで「北京にも拠点を構えることを検討している」と明かし、さらにアクセルを踏む。石黒会長が進めるアジア戦略とは――。
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| 石黒和義会長 |
JBCCホールディングスは、2年ほど前にアジアでの営業拠点開設を開始している。「成長が見込めない国内市場にとどまっていては、売り上げ拡大は見込めない」という石黒会長の危機感からだ。
調査会社IDC Japanが昨年末に発表した国内IT産業調査によれば、2008~13年までの年平均成長率(CAGR)は1.1%減となる。一方、09年の中国の情報サービス業は前年比25.6%増(中国ソフトウェア産業協会調べ)。今後も同水準の比率で向こう3~5年は伸びる可能性が高い。石黒会長は、こうした成長率の差を念頭に置いて、中国を中心に海外への進出を加速させているのだ。
石黒会長は、「ユーザー企業の幹部に会うと、アジア市場の話でもちきりになる」と語り、JBCC-HDのメインターゲットである中堅企業もアジアに着眼していることを実感している。また、「海外事業は若干強引でも、自らリーダーシップを発揮する必要がある」として、積極的に海外拠点を開設している理由を説明する。
その言葉通り、石黒氏は今年4月に自身の役職を代表取締役社長から代表取締役会長に移し、海外事業に注力している。海外事業の売上高を、2015年までに150億円にまで引き上げる計画を公言。この時点の全売上高目標は1000億円で、海外で全体の15%を獲得する計算になる。中国だけでなく、東南アジアにも進出するのは、中国でのビジネスリスクを考えた日本企業が東南アジアに進出するケースが増えているからだ。
150億円の国別内訳は、中国が100億円でそれ以外が50億円。中国では、大連、上海、広州に拠点を構えているが、加えて北京にも拠点を開設することも検討している。一方、中国以外では、タイのバンコクに現地法人を開設した。石黒会長は、「ベトナムでも具体的な案件が出ている」と東南アジアにもチャンスありと感じている。対象は各地に進出した日本企業で、SIとITサービスを手がける。日本と同様のビジネス展開である。
拠点開設で特徴的なのが「縦の線」で、中国から東南アジアにかけて縦の線で拠点を開設している。各拠点ごとが、まずは「点」として拠点を設置する都市を攻め、その後に横に展開して「線」をつくり、将来的には「面」となって中国と東南アジアを攻略しようとしているわけだ。
JBCC-HDは、現時点で最もアジアに積極的な中堅SIerといっても過言ではない。国内市場の閉そく感を考えれば、中国を中心としたアジアに目を向けなければならないのは必至。その先駆者としてのJBCC-HDの動きは注目に値する。(木村剛士)