JBCCホールディングス(JBCC-HD、山田隆司社長)は海外ビジネスを急拡大させる。これまでは、「グローバル進出の芽は摘みたくない」(石黒和義会長)と、控えめな表現をすることが多かった同社だったが、ここにきて急変。2015年度には中国を中心とするグローバルで「100億円の売り上げを立てる」(同)と、方針を大きく変えた。海外ビジネスの拡大戦略に出る同社にいったい何が起こったのか。
中国などで100億円売る
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| 石黒和義会長 |
「自社で開発したソフトがアジアで売れればいい。ドメスティックな会社である当社のグローバル化はそのレベルだ」――2007年12月、石黒和義社長(現会長)は、グローバル展開への感触について実に消極的な姿勢を示していた。そのわずか3年後には、同一人物が「年商100億円を、中国を中心とするアジアで稼ぐ」とコメントすることになった。その背景には、どんな事情があったのだろうか。
JBCC-HDを取り巻く環境は激変した。08年3月期は年商1000億円にもう一歩というところまで売り上げが順調に伸びた。しかしその後、経済危機の勃発で、2期連続の減収減益。10年3月期には連結売上高が前年度比14.8%も減ってしまったのだ。その一方で、09年6月には中国の大連銀行に同社で独自に開発したシステム運用監視の仕組みを売り込むことに成功。“オフショア開発の発注先”という従来の中国の位置づけが、“有望市場”へと変わった瞬間でもあった。
09年7月、アジアの製造業向け生産管理システムに強いリード・レックスをグループ会社に加え、10年1月には大連に続いて上海にも事業会社を立ち上げた。年内には広州に、また11年には、北京または天津での拠点開設を目指す。国内ビジネスを山田隆司社長にほぼ委ね、石黒会長は精力的に中国各地を飛び回る。「上海事業会社のオフィスには、執務に必要なオフィス家具も買い揃え、石黒会長の中国語もみるみる達者になっていく」(JBCC-HDの幹部)と、熱の入れように周囲は舌を巻くほど。
上海では、中国大手SIerのデジタル・チャイナグループと資本業務提携し、一躍注目を集めたSJIグループの聯迪恒星(南京)信息系統(LDNS)と協業。リード・レックスの資産も一部受け継ぎ、ERPや生産管理などの業務アプリケーションの設計・実装、大連銀行で実績を積んだシステム運用までワンストップで提供できる体制の構築を急ぐ。「日系の顧客企業だけでなく、中国現地の顧客開拓も視野に入れる」(石黒会長)と、鼻息が荒い。
経済危機と中国SI市場の拡大を機敏に捉え、M&Aやアライアンス、拠点展開を迅速に進めるJBCC-HDグループ。会社を変え、市場の変化に適応するには、トップ自らがスピーディに“変身”することが不可欠ということを表す事例である。(安藤章司)