その他
シャープがPCから撤退した理由は
2010/11/11 14:53
週刊BCN 2010年11月08日vol.1357掲載
「シャープ、PC事業を撤退」のニュースが報道された。これについて気になることがある。同社は2009年、すでにPCの生産を打ち切っていた。ここにきて、撤退を明らかにしたのは、なぜなのだろうか。
改めて公表したのはなぜ?
撤退の報道についてシャープに問い合せたところ、「今後は、従来のハードを中心としたPC事業から脱却し、ハードとコンテンツ配信を融合させた当社ならではの『GALAPAGOS(ガラパゴス)』事業を展開していく」と、広報関係者はコメントした。PCは低価格化が進み、粗利がとりにくくなっている。そんなPCに固執するよりも、コンテンツで利益につなげるということだろう。
ここでも気になる点がある。シャープでは以前、インターネットを前面に押し出したPCを発売していた。「インターネットAQUOS」がそれだ。では、「PCとAVの融合」を掲げたこの製品は、本当に売れていたのか。BCNランキングによれば、デスクトップPCやノートPCに加え、iPadに代表されるスレートPC(板状のモバイル端末)を合算した2009年のパソコン全体でみるメーカー別年間販売台数シェアで、シャープは16位。シェアは、わずか0.3%にとどまった。生産打ち切り前の2008年時点も、シェア1.5%で11位と低迷していた。では、「ハードとコンテンツの融合」の「GALAPAGOS」ならば売れるのか。「インターネットAQUOS」でサービス型モデルを構築できたかどうかは抜きにして、成功するかどうかは今後の取り組みいかんにかかってきそうだ。
ただでさえ「粗利率が低い」といわれているPC事業。“ボリューム”が小さければ、当然ながら利益が確保できず、採算に合わないといわざるをえない。しかも、日本は他国と比べると国産メーカーや米国メーカーなど、プレーヤーが多く、ネットブックで台湾勢が日本市場でのシェア拡大を図ろうとするなど、競争激化の様相を呈している。競争激化と低価格化で、ますます生き残りが難しいなか、シャープの撤退は「さもありなん」との見方が大勢を占めるだろう。
これまで手がけてきた事業の撤退を決断。公に発表するのは口でいうのは簡単だが、いざ実行するのは壁が高い。製品を購入してくれた顧客を中心に、外部への対応を万全に行う体制を整備しなければならないというのが最も大きな理由だ。それに、シャープの場合は関連技術を捨てるのが惜しいとの判断で、「提携先をみつけるために、公表しなかったのではないか」との見方もある。
「PC事業に携わっていた社員に踏ん切りをつけさせるためだったのではないか」と、公表理由を“社内説得”と分析する業界関係者もいる。こうしたことを踏まえ、PCよりも利益を生むことができそうな「GALAPAGOS」を市場投入できるようになり、やっとシャープは「PC事業の撤退」を社内で共通認識にして、不採算事業をなんとか復活させなければならないという呪縛から解き放たれたというのも、うがった見方ではないはずだ。(佐相彰彦)
「シャープ、PC事業を撤退」のニュースが報道された。これについて気になることがある。同社は2009年、すでにPCの生産を打ち切っていた。ここにきて、撤退を明らかにしたのは、なぜなのだろうか。
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