シマンテックのAPJ(アジアパシフィック、日本)地域のパートナービジネスと中小企業ビジネスの担当責任者であるデビッド・ジーンシオル・バイスプレジデントが来日。パートナー関係にあるダイワボウ情報システム(DIS)豊田惠造取締役販売推進本部長兼業務部長兼東京支社長とともに、BCNのインタビュー取材に応じた。(文中敬称略)

DISの豊田惠造取締役(左)、シマンテックのジーンシオル・バイスプレジデント
――シマンテックは、DISやほかの流通大手が抱えるリセラーを対象とする支援策を打ち出していますね。パートナープログラムについてお聞かせください。 ジーンシオル 当社はパートナービジネスに大きな投資を行い、その結びつきを強固にしています。各国のパートナーが当社のセールスフォースの延長上にあることを強く意識して、昨年、パートナープログラムを強化しました。当社の提供するセキュリティとストレージは予見性があり、他者との差異化を図ることができる付加価値とメリットをもたらします。
昨年4月にパートナープログラムの概要を発表し、11月に詳細をリリースしました。キーになるのは「スペシャライゼーション」です。パートナーに対して、当社が提供する八つのコア技術と「SMB」という市場での専門性を認定します。これによって、パートナーは迅速に利益を引き出すことができます。特筆すべき点は、従来の技術だけではなく、買収を行った暗号化などの新しい技術もスペシャライゼーションに組み込んで運用していくことです。
――パートナープログラムを推進するうえで、ディストリビュータであるDISは非常に重要なパートナーですね。 ジーンシオル DISは、サーバー、法人PC、ストレージを重点的に販売し、全国に高いカバレッジをもっています。DISと当社で強力な関係を構築し、PCやサーバー、ネットワーク機器に当社の製品を組み合わせて販売してもらえればと思っています。
――豊田取締役にうかがいます。昨年11月、富山で「DISわぁるど」を開催されたときも、ジーンシオル・バイスプレジデントをスピーカーとして招へいされました。両社の協業体制は、シマンテックの競合他社に比べて強固なものなのでしょうか。 豊田 当社は法人PC、周辺機器など多岐にわたる製品を取り扱い、お客様のニーズに極力対応する体制を敷いています。その意味では、メーカー色はありません。
――11月の「DISわぁるど」では、クラウドと仮想化を強く打ち出されていました。今、DISが注目する分野は。 豊田 今はクラウド分野に力を入れています。パートナービジネスでクラウドサービスを売る仕組み「iDATEN(韋駄天)SaaSplats」を取り入れ、また、タブレット(スレートPC)、スマートフォン、デジタルサイネージなども注目商材の一つです。
「DISわぁるど」は地域密着型のイベントで、日本全国を巡回していきます。富山では、販売店に対してDISグループの技術力をアピールする展示ブースのほか、クラウドや仮想化を中心とする14のセミナー、ICTによって、子どもたちの「協働教育」を支援する「フューチャースクール」の模擬体験ブースを設けました。子どもに未来を与える新しい事業として、地域でも注目されています。
――クラウドや仮想化、教育分野でのICTの活用など、新しい潮流はセキュリティにも影響を及ぼしますね。 ジーンシオル 「フューチャースクール」が広がれば、次世代の子供たちを取り巻く「情報」は多岐にわたります。例えば40年前、世界の人々と付き合う手段は、手紙を媒介にするペンパルでした。それが、今やインターネットで100人以上の人と簡単に付き合えるようになっています。うちの娘は7歳にして、Skypeで友人とコミュニケーションしているほどです。変化は私生活だけでなく、仕事にも現れています。コンシューマ用のデバイスやアプリケーションで仕事ができるので、家に帰っても仕事をしている。生活と仕事の境界がなくなりつつあるのです。このように、いつでもどこでも利用者がITを簡単に使える環境の裏では、複雑なインフラが動いています。そうなると、新しいセキュリティが必要になります。
豊田 ハードは最終的なインターフェースにすぎません。PC、サーバー、ネットワークを稼働させる裏で、不可欠なセキュリティをシマンテックは提供しています。
――DISが注目している新しいITの潮流と、それを実現するために複雑化するインフラに対して、新しいセキュリティが必要となっている。そのなかでシマンテックの位置づけはより重要なものになってくるということですね。DISは、シマンテックにとって重要なパートナーとなるリセラーを多く抱えています。今後は両社でリセラーにパートナープログラムへの参加を促していくことになると思いますが、DISがシマンテックに要望することはありますか。 豊田 当社は地域密着型で、1万7000社の販売店、約90の拠点を抱えています。今のシマンテックのパートナー支援は、エンタープライズ、SMBという企業規模を基準にしたものだと思いますが、エリア業種に合ったプログラムを推進していただきたいですね。現状では、地域ごとに温度差があります。当社としては「売れない」ではなく「売らなければいけない」。シマンテックと一緒にこの差を埋めて、地域に合った売り方を一緒に展開していきたいですね。
――ありがとうございました。 (取材/文・鍋島蓉子)