ユーザー企業・団体にソフトウェアの適正な管理を訴える団体が設立された。「ソフトウェア資産管理評価認定協会（SAMAC）」という一般社団法人がそれである。SAMACの設立によって、ユーザー企業・団体はこれまでないがしろにしていたソフトの管理に本腰を入れて取り組む可能性が高まる。

　「ソフトの適切な管理」とは、企業・団体が使うパソコンのなかにインストールされている全ソフトについて、「どのパソコンに・どのバージョンの・何が入っているか」を把握することを指す。「SAM（ソフトウェア資産管理）」とも呼ばれる。ソフトの資産管理を怠れば、社員の誰かが不正コピーソフトを利用していても、その事実に気づくことができない。

　ソフトメーカーにとって、自社製品の不正利用は切実な問題で、独自で摘発調査を行うなどで撲滅に動いており、明るみに出たケースもある。例えば、2010年7月に発表された関西の製造会社のケース。ソフトの不正利用の撲滅活動を展開する団体「ビジネスソフトウェアアライアンス（BSA）」に通報があり、この製造会社を調査したところ、合計3913本もの不正コピーソフトが使用されていたことが判明した。結果、この製造会社はソフトメーカーに対して、総額3億1520万5275円の和解金を支払っている。しかしながら、摘発調査には限界がある。ユーザー企業にとっては、パソコンに格納されている複数のソフトを管理する作業は大変な手間がかかり、生産性が向上したり、売上高が上がったりする業務でもないので、敬遠しがちだ。事実、BSAが調べた調査によると、日本のコピー率は21％で、損害額は世界ワースト8位という。

　SAMACには、この状況を打ち破る狙いがある。活動は、ユーザー企業・団体のソフトの管理体制を独自指標に基づいて評価・認定し、基準を満たしている場合は、認定証いわば「お墨付き」を与えるというもの。この認定証が、プライバシーマーク（Pマーク）のように企業の信用力を示す価値基準と地名度を備えることになれば、ユーザー企業・団体は法令遵守の側面だけでなく、取得せざるを得なくなってくる。

　SAMACの会員企業は、アドビシステムズやオートデスク、マイクロソフトといった大手ソフトメーカーだ。これらの企業は不正コピーをなくし、正規版を購入させたいので、SAMACの活動に率先して協力するだろう。3社を通じたPR効果はかなりの力をもつはずだ。また、評価・認定業務はSAMACが手がけるのではなく、ISOなどの評価・認証事業を営む企業がビジネス展開できるような仕組みも整えた。普及・啓発が中心だった従来の不正コピー撲滅活動とは、明らかに異なる。

　ユーザーは法律を守り、ソフトメーカーは正常にユーザーからソフトの利用料金を徴収でき、ソリューションプロバイダは新たなビジネスを獲得できる。そんな好循環をつくることができる可能性が出てきた。（木村剛士）