その他
NEC・レノボ連合の誕生 パソコン事業売却に傾く報道に違和感
2011/02/17 21:07
週刊BCN 2011年02月14日vol.1370掲載
パソコン事業でのレノボ・NEC連合の誕生。その記者会見で記者に最も強い印象を与えたのは、高須英世氏の表情だった。高須氏は、NECパーソナルプロダクツの現社長であり、共同出資で設立される持ち株会社の社長と、その傘下の新会社「NECパーソナルコンピュータ」の社長を兼務するキーパーソンである。
今回の協業が報道された後、IT業界のなかで大勢を占めているのは、極端にいえば、「NECはパソコン事業を売った」という見方だ。共同で新たに設立する持ち株会社の出資比率はレノボが51%、NECが49%であることがその根拠となっている。記者会見でも、質疑応答に入って、「パソコン事業の権利を譲渡するという認識でいいのか」と、某記者が質問の口火を切った。NECの遠藤信博社長は当然のごとく否定したが、会場にいる誰もがこの記者と同じ質問をしたかったに違いない。そして、30日には、一部報道で新会社の設立から5年後の2016年に、レノボがNECの同意を前提に全株を取得する権利をもっていることが明らかになったことで、その論調に拍車がかかる。「NECは段階的にパソコン事業を手放そうとしている」と。
しかし、高須社長の表情は極めて明るかった。高須社長は、98年から現在に至るまで、約13年もの間、パソコンのビジネスに関わり、NECパーソナルプロダクツの社長は、今年の4月でちょうど5年になる。成熟期を迎えた市場のなか、苦しみながらも同社がトップシェアを維持し続けてきた功績は大きい。「仮に原価を1000円下げるだけでも利益へのインパクトはかなりなもの」「米沢の工場は大きな強み。今後も継続していくよ」など、会見直後も饒舌に今後の展望を語っている。協業発表の会見の席で暗い表情は誰しも見せないだろうが、段階的にパソコン事業を売却することを念頭に置いている人物の顔とは、到底思えなかった。
今回の協業は、米IBMがレノボに事業を売却した時のように、単純な仕組みではない。持ち株会社の下にそれぞれの事業会社がぶら下がり、NEC側、レノボ側がそれぞれ個別に事業を展開する。NECブランドも製品ラインアップもNECが独自に決めていく。NECは単独で事業を展開するわけだ。
コンピュータをインターネットを通じて利用するクラウドコンピューティングが主流になっても、クライアント端末は必要不可欠だ。スマートフォンがますます存在感を増すのは必至だが、パソコンは形を変えながらもクライアント端末の主役をまだ演じるはずだ。折半出資ではない点は気にかかるが、部品調達力を強めたNECが、パソコン事業をやすやすと手放すとは考えにくい。一般紙の報道で主流となりつつあるNECのパソコン事業売却論は、偏った見方のように思えてならない。(木村剛士)
パソコン事業でのレノボ・NEC連合の誕生。その記者会見で記者に最も強い印象を与えたのは、高須英世氏の表情だった。高須氏は、NECパーソナルプロダクツの現社長であり、共同出資で設立される持ち株会社の社長と、その傘下の新会社「NECパーソナルコンピュータ」の社長を兼務するキーパーソンである。
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