日本オラクル(遠藤隆雄社長)は、1年をかけてパートナー支援制度をグローバルモデルへ移行し、このほど新制度を本格的に稼働させた。同社は2010年2月に、米本社の制度変更に沿って、データベース製品を中核にした従来の制度を改め、相次いで買収したミドルウェアやアプリケーションなどの分野まで支援範囲を拡大。今年1月には、一昨年の大型買収となったサン・マイクロシステムズの製品を含め、保有するプロダクトを販売する日本のほとんどのパートナーと、個別に新支援制度への移行に合意する再契約を完了した。これを受け、今後は制度自体を随時拡充しながら、専門領域に強いITベンダーの拡大を目指す方針だ。(谷畑良胤)
ユーザーの手助けとなる認定制度
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| 新認定制度「Specialization」を取得する意義を語る志賀徹也・副社長執行役員 |
日本オラクルは2010年2月、オラクル製品を利用してソフトウェアを開発・提供するシステムインテグレータ(SIer)などパートナー向けの従来の支援制度「Oracle PartnerNetwork(OPN)」を刷新した。それ以前にグローバルで適用していた新支援制度「Oracle PartnerNetwork Specialized(OPN-S)」を日本に導入した。新支援制度は、データベース中心の仕組みを改めて、買収で拡充したミドルウェアやアプリケーション、インダストリー(業種)別製品の分野まで範囲を拡大している。
新支援制度では、オラクルの主力製品や業種別ソリューションを中心に30種類の専門領域「Specialization」と呼ぶカテゴリーを新設。このカテゴリー別にパートナーの専門性を評価して、「Specialization」の称号を与える認定制度を新たに導入している。国内ITベンダーのなかではこれまでに、アクセンチュアやTIS、第一コンピュータリソース、富士通、NECなど13社で合計約30の「Specialization」を取得している。
国内のパートナーが取得できるカテゴリーは、現在までにすべてが揃ってはいないが、順次拡充し、約70種類にまで増やす。2月までには、買収後の移行政策が注目されていたサン製品のカテゴリーがすべて揃う計画という。また、同社では近く、インバウンドで入ってきたり同社の営業担当者が獲得した案件(セールスリード)を、その案件ごとの要件に合致する技術力をもつITベンダーに提供する「Oracle Open Market Model(OMM)」という新プログラムも開始する。
「OPN-S」では、各プロダクト別の実績や導入したエンドユーザーからの推薦、「Specialization」の取得数、一定の技術レベルを満たした「OPNスペシャリスト」の人数などでパートナーの実力度を評価。上位レベルから「Diamond」「Platinum」「Gold」「Silver」の各段階で称号を付与する。「Specialization」認定を取得して、スペシャリストを50人以上保有するパートナーには「Advanced Specialization」も用意している。
志賀徹也・副社長執行役員は「エンドユーザーのシステム要求は、年々複雑化してきている。同時に、エンドユーザー側では、オラクル製品を使って戦略的なシステムを構築する際、技術力と実績をもった安心して任せられるITベンダーを探すのに苦労するケースが多くなってきた。今回の新支援制度を利用して、ITベンダーの実力度を表す指標を示すことで、エンドユーザーがパートナーを選択しやすくなることを狙った」と、「OPN-S」の意義を説明する。今回の新支援制度の下では、より上位レベルの認定を取得するパートナーほど、日本オラクル側との連携で案件獲得の機会が増えることになる。
米本社では過去6年間に、ピープルソフトやシーベル、JDエドワーズ、ハイペリオン、BEAシステムズなどのほか、日本で知名度が低い業種別ソリューションをもつベンダーなどを含め、約70社を買収した。09年12月に米本社での新支援制度「OPN-S」の開始を経て、日本に導入したその後も、日本オラクルは、買収したプロダクトごとに存在していたパートナー契約や制度の整理に奔走していた。同社ではこの1年間、各プロダクト別に契約形態がグローバルと異なる形で存在していたが、それをグローバルモデルに一元化する作業が続けられてきたというわけだ。
志賀副社長は「新支援制度は、オラクル製品を使って、より専門性の高いシステムを構築することができるパートナー集団をつくるためのものだ」と説明する。今年度(11年5月)中に「Specialization」の取得ベンダーを150~200社に拡大し、エンドユーザーの課題解決に最適なパートナーを拡充する計画だ。
表層深層
米オラクルのベンダー買収は、この6年間で約70社以上に及ぶ。買収の対象は、国内でも名が通っている世界的ベンダーだけでなく、業種別に特化した製品を出すベンダーまでさまざまだ。買収された有力ベンダーは日本法人を置き、各社の製品を担ぐITベンダーを国内に抱えていた。これを一斉に“オラクル化”することが日本オラクルに課せられた課題だが、既存のオラクル製品との整合性や、そこに紐づく販売パートナーをどう適合させていくか、あるいはまた顧客にみえやすいようにするかは大変な作業だ。その間に、グローバルのパートナー制度が変わったのだから、製品や流通の仕組みを日本オラクルの制度に適合するだけでなく、グローバル対応が求められる。
志賀徹也・副社長執行役員は、「グローバルに一元化する前は、旧来の日本市場独自のパートナー施策を続けていた。ただ、プロダクト別に20以上の施策が、制度や契約形態などが異なる形で存在していた」という。グローバル制度への移行は、これを一元化し、同社とパートナーが一体感のある形で市場を拡大できる仕組みになったということだ。
「OPN-S」では、パートナーのレベルを四つに分類した。このうち「Silver」は、中小規模向けに販売するパートナー向けに設けた領域だ。それ以外の上位レベルは中堅・大企業向けにシステム構築するSIerに対する制度。日本市場独自の“味付け”を行いつつ、新支援制度が本格的に稼働を開始する。