富士通マーケティング(FJM、古川章社長)が、意表を突く新製品を立ち上げた。「AZBOX(アズボックス)」がそれで、ハードとソフトと設定・構築作業をセットにし、通常はSI(システム構築)が必要なITソリューションをアプライアンス(専用機器)化した。導入コストを削減し、手間も軽減したことを“売り”としており、販社経由で流通させようとしている。「所有から利用へ」「コンピュータをもたない経営」が流行だが、その流れに敢えて逆行するようなモデル──。そのやり方は、かつての「オフコン」の販売形態をみるようだ。FJMの狙いは何か。
「敢えて時代に逆行する」
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村松直岐 サービス事業部長 |
「AZBOX」を簡単に表現すれば、特定機能だけを備えたコンピュータだ。「情報共有」「パソコン管理」「バックアップ」など、業種・業界を問わずFJMがターゲットに置く中堅以下の企業で、引き合いが強いソリューションを選定。それに適したハードとソフトをFJMが選んでインテグレーションし、アプライアンスとして販売する。
構築・設定作業は極力なくし、その代わり「導入(設定)」と「運用」で2種類の詳細なマニュアルを用意した。こうすることで、通常のSI手法で顧客に導入するのに比べて、運用までの時間と価格を約20%抑えられるという。ソリューションのメニューは44種類用意。来年度末までには100種類にまで増やす。 販売は、FJMの直販とSMBをターゲットに置くSI会社を経由した間接販売で行う。販社にとっては、一般的なSI手法を用いてソリューションを販売するよりも手離れがよく、短期間でソリューションを販売することができる。顧客には通常よりも安い価格でソリューションを売れるが、仕入れ原価が下がっているので利幅は変わらない。
コンピュータをもたずに、ネットワークを通じてコンピュータを利用するという流れが強まっている。しかし、「AZBOX」は専用コンピュータをユーザーの手元に置くやり方だ。村松直岐・ソリューション事業本部サービス事業部長はこれについて、「時代に逆行するようなやり方だというのは分かっている。ただ、販社へ提供する今の商材として『AZBOX』は十分価値がある」と主張する。汎用的なソリューションについては、「AZOBX」を活用して手離れよく商談を片づけ、基幹系など大規模なシステムには通常のSIのように多くのSEと工程をかけてシステム開発する。そんなイメージだ。
また、村松事業部長はこうも主張する。「SEを大量投入してシステム開発する手法は今後縮小する。クラウドが主流になれば、なおさらだ。その時に備えて、一般的なSIから脱却するための一つのステップ商材とも位置づけている」。
「AZBOX」は直販はするものの、メインは販社経由の間接販売を念頭に置く。今回の新製品は、FJMが販社とともにビジネス展開するため策として、考え抜いて出した一つの回答なのだ。(木村剛士)