10月1日に誕生した富士通マーケティング(FJM、旧富士通ビジネスシステム=FJB)は、新体制への移行に伴い、9月29日にFJBとして最後の記者会見を開いた。これまで口を閉ざしていた業績目標を公表。2015年度(16年3月期)の売上高で3000億円を目指すとし、09年度(FJB時)に比べて約2.5倍という挑戦的な数値をぶち上げた。国内のIT市場全体を考えると、かなり強気。パートナー支援制度や新商品の発表を行ったものの、起爆剤とするには力強さに欠ける印象がある。
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| 会見では終始厳しい表情だったFJMの古川社長 |
FJMは、富士通グループのなかで中堅企業向けビジネスのけん引役を担う。FJBの既存部隊に加え、富士通から中堅企業向け事業部門を移管して組織を形成。大手企業向け事業を手がけながら、富士通や富士通のパートナーと連携し、グループ全体の中堅企業向けビジネスを伸ばすことをミッションとする。ターゲットとなる中堅企業市場は、年商30億円以上300億円未満のユーザー企業と定めた。
2015年度(16年3月期)の業績目標は、売上高が09年度比(FJB時)約2.5倍の3000億円、営業利益率は同4ポイント増の5%とした。そのうち310億円だった中堅企業向けビジネスを、2000億円にまで引き上げるとぶち上げた。直近4~5年はほぼ横ばい、よくても1~2%程度の成長といわれる国内IT市場を考えると、かなり強気だ。
伸ばすためのカギは、パートナーとの協業関係強化にある。約500社に及ぶ富士通のパートナーに対して、FJMと組むメリットを与え、FJMを経由して製品・サービスが流通・販売される仕組みを構築できなければ、達成は難しい。中堅企業市場でも当面は直販を捨てないという方針を貫くFJM(本紙9月27号の4-5面参照)だけに、パートナーとの市場の棲み分けをいかに図るかが重要なポイントとなる。加えて、パートナーが売りやすい商品を提供し、アプローチしやすい顧客先を紹介する体制もつくらなければならない。FJMはそうした体制づくりの一環として、パートナー経由の案件の比重を高める。現在、中堅企業向け市場で富士通のパートナーを経由したビジネスの比率は富士通を含めて約35%だが、これを15年度には50%まで高める方針を示している。
今回の会見で、FJMは新パートナー支援プログラム「MAST(mid-Market Strategy Team)」を開始し、富士通から東名阪地区のパートナー支援部隊を約100人、FJMに移管させて組織を増強。中堅企業に適した「GLOVIA smart」の新シリーズ「GLOVIA smart 会計 きらら」も発表した。仕組みと体制、そして商品を用意したことをアピールしている。
「中堅企業市場のビジネスを進めるうえで何よりも大事なのは、パートナーとのコラボレーション。それに誠心誠意取り組む」。会見でFJMの古川章社長はこう語っている。
今回のFJMの誕生は、計画よりもほぼ1年遅れた。パートナーへの説明不足が壁となったのだ。疑心暗鬼の富士通パートナーをどこまでその気にさせることができるか。会見で発表された内容は、整理はされているものの、それが機能するかどうかは未知数という印象が残った。(木村剛士)