有力SIerのコムチュア(向浩一会長)は、4月1日付で直系販社の新設と保守サービス会社の分社化を実施した。自らの主力商材を「モバイル」と「クラウド」と位置づけ、商流と商材を大幅に刷新する。自社商材の増強や、有力プロダクト・サービスベンダー、クラウド事業者との関係を強化することでビジネス拡大につなげる。直系販社のコムチュアマーケティング社長には、ソフトブレーン社長などを経験し、営業支援システムに精通する松田孝裕氏が就いた。
情報システムのクラウド化が進むなか、コムチュアは「モバイルとクラウドを切り口とした提案活動」(向会長)をビジネスの主軸に据える。具体的には、スマートデバイスなどのモバイル端末から、企業内システムに安全にアクセスできる「ConnectONE」や、インターネットイニシアティブ(IIJ)のクラウド基盤サービス「IIJ GIO」を活用したSaaS型サービスの展開がある。セールスフォース・ドットコムのクラウド基盤「Force.com」上で動くフィールドサービス業務システムといった、国内外の有力ベンダーと連携した商材拡充を急ぐ。
自社オリジナルの商材では、ワークフロー「CNAP」や「CRMセレクト」、グループウェア「Domino Smart Web」などを揃える。だが、「まだ十分でない」(同)とし、コラボレーション系を中心に向こう1年間で累計20種類ほどに商材を増やす。コムチュアは、もともとコラボレーションなどフロントエンドシステムに強みをもつSIerであり、現在取り組んでいるクラウドやモバイルを切り口とした商材づくりにおいても、得意分野のフロント系に重点を置く。
こうして揃えたプロダクトやサービスの拡販は、新設した直系販社のコムチュアマーケティングが推進する。商材開発と販売を分けることで、「より迅速な販売戦略を展開する」(コムチュアマーケティングの松田孝裕社長)方針。インフラ構築や保守、運用サービスについては分社化したコムチュアネットワークが担う。コムチュアマーケティングは、向こう3年で15億円の売り上げを念頭に、ビジネスを拡大させる。
コムチュアが得意とするフロント系システムは、今後、大きな変化が見込まれる。例えば、東日本大震災に伴う電力不足。在宅勤務やサテライトオフィスなどITの活用で人の移動を抑制し、電力削減につなげる動きが活発化する可能性がある。向会長は、かねてから「経済や社会に大きな変化が起こるときは、ITもまた変化に適応する必要がある」とみており、厳しい経済環境下においても、変化適応型経営で成長につなげる。(安藤章司)

コムチュアの向浩一会長(左)とコムチュアマーケティングの松田孝裕社長